東大 航空宇宙工学専攻 平成28年 航空宇宙システム学(午後)

航空宇宙システム学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成28年の航空宇宙システム学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

航空宇宙システム学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679620e7bfa2872ebcae4fde>

総評

 非常に興味深い題材が出てきましたね。一見すると何を制御したいのかよくわからなかった方もいるかもしれません。

 読者の皆様は今回題材に上がったシステムが何なのか考えてみましたか?

 大学院側が公式見解を出しているわけではないので、推測の域を出ませんが本問はドローンを題材にした制御工学の問題と思われます。

 実は平成27年の4月に首相官邸にドローンが落下するという事件が起きました。

参考URL:<判例紹介・首相官邸の屋上にドローンを落下させた事案の刑事事件判決について(東京地裁H28.2.16判決)|弁護士|舞鶴法律事務所>

 この事件をきっかけにドローンを使ったテロ活動に対する対策の脆弱性が論じられるようになり、ドローン飛行に関する法規制が進むきっかけとなりました。

図. 事件で使われたDJI社製のPhantom外観画像(DJI社ホームページより)

 航空宇宙業界的にも注目すべき事案だと出題者も感じたので、本問を通してドローンの飛行特性と制御に対する考え方を出題したのではないかと推測しております。

 本問で提示されたシステムは、ドローンを切断してその断面を見たような平面上の図が与えられています。このシステムに関する懇切丁寧な前提条件が問題文で提供されており、受験生はその誘導に沿って解答しやすいように問題が設計されているように見受けられます。

 システムの説明を基に運動方程式を立式させ、状態空間表現を記述する必要があります。その他にもシステムの可制御性、可観測性、安定性評価をした後、ドローン(と思われるシステム)の飛行に関する考察を要求しています。

 全般的に問題構成をきれいにまとめつつ、微小近似をすることでシステムを線形化して制御理論が使えるように工夫がされている一問です。

難易度 ★★★☆☆

 見慣れない題材ではあるものの、受験生がしっかり考察できるよう丁寧な誘導とシステムの説明をしてくれています。最後の問題が少し難しいかもしれませんが、全般的には制御工学の基本的な内容を聞いています。

 よって難易度は標準的な★3つとしました。

解答の指針

第1問

 システムの運動方程式を記述します。本問は題材の状況設定が少し複雑なので、丁寧に図を書いて式を立てていきましょう。この後の問題解答の前提になる問題なので、間違えないように細心の注意を払いましょう。

第2問

 第1問の結果を利用しつつ、入力信号も代入してシステムの線形化を実施しましょう。

第3問

 副系1と2でそれぞれ可制御性の評価が必要です。可制御性行列を作って評価していきましょう。

第4問

1,2

この小問1と2はほぼ同じ戦略で回答できます。この問題の面白いところは副系2で観測できる状態量の違いがシステムの可観測性にどう影響を与えるかを考えることができる点です。

 この観測できる物理量の違いが可観測性行列を作る際に効いてきます。

 是非本問を通して理解を深めてください。

第5問

 良くあるフィードバック制御ですね。問題文で与えられたフィードバック情報をシステムに入力し、このシステムが安定となるための入力量の条件を求めていく問題です。

第6問

 題意のシステムの飛行特性に関する考察です。この問題は…採点する側も点数をつけるのが結構難しいのではないかなと思いました…。

 t=0ではシステムは空気中で静止しているので、水平飛行するための姿勢(角度)とその入力履歴について説明できていれば点数はもらえそうです。

 定性的に説明せよと言ってきているので、適宜図やグラフなども使いながら前問までの結果を組み合わせて回答していくとそれなりにしっかりした解答ができるのではないかなと思います。

 

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