東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成18年の推進工学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
推進工学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/67962672816e614726a61364>
総評
いやぁ、この年は運が悪かったですねぇ…。熱化学からの出題となりましたが、過去問の出題傾向を見ても熱化学が取り扱われている大学院の入試問題は本問以外で見たことないですね…。他の大学の院試においても機械系専攻でこのトピックが出るような院試は皆無だと思うので、大分正答率が低かったのではないかと推測しています。
但し、授業でもやってはいるはずですし、参考書を見てもトピックとしては取り扱っているので、対策をしていればできなくはないという感じでしょうか…。
実務的な面で考えると、推進系の設計や性能研究をするうえでは燃料の化学反応や燃焼効率は理解しておく必要があります。受験勉強の効率という意味では本問の対策については優先度を下げるべきだと考えてはいるものの、前述のような仕事や研究をやりたいと考えている人は是非理解しておいてほしいトピックになります。
難易度 ★★★★☆
参考書を読めばキャッチアップは可能だとは思うものの、それほど力を入れて対策している人は少ないと思うので、難易度は難しめの★4つとしました。
この問題を攻略できた人は他の受験生に対して大きなアドバンテージを稼げたのではないかなと考えています。
解答の指針
第1問
わざわざ化学量論比についての説明を入れてくれているので、化学反応式を正しく記述できれば解答はできるはずです。
第2問
1.
これは本番で解けなかった人多かったかもしれませんね…。少し解説を記載しておこうと思います。
問題文中に出てくる”比重“という概念ですが、化学分野においては、「ある基準となる物質と他の物質との質量を同じ体積で比較した時の比」と表現できます。
上記の言葉だけではイマイチイメージできないと思うので、もう少し補足します。
・炭素(C)の分子量を14とすると、標準状態(22.4L)での質量は14.0[g]ということになります。
・酸素(O2)の分子量は32なので、標準状態(22.4L)での質量は32.0[g]ということになります。
上記を基に考えると、炭素の、酸素における比重(SG)は\[SG=\frac{14}{32}=0.4375\]
ということになります。これをヒントに検討を進めてみてください。
2.
水素と酸素の単位質量当たりのモル数を仮定して熱化学方程式へ代入してみましょう。これらと質量混合比の情報が与えられているので計算に考慮すると答えが出てきます。
3.
このままでは解けないので、断熱火炎温度、燃焼ガス1kgあたりの定圧比熱を文字でおいて発熱量との関係式を立式してみましょう。
あとは2の結果も利用して計算を進めてみましょう。
第3問
1.
平均分子量を単に求めればいいだけなので、定義に従って問題文で与えられた情報を基に計算を進めれば答えが出ます。
2.
第2問の3で作った方程式と問題文で与えられている表を駆使して計算を進めましょう。また、燃焼ガスの組成がモル比で与えられているので、これも考慮する必要があります。
3.
これはよくあるタイプの考察です。実際の理論上の計算によって得られた断熱火炎温度が実験で得られる温度よりも高くなる理由を答えるというものです。
学生実験などを通して過去考察したことがある方はさらっと答えられる気がします。そういう意味では、授業の復習だけでなく、学生実験の考察や装置の使い方、実験内容も復習しておくとよいと思います。
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