東大航空宇宙工学専攻平成21年推進工学(午後)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成21年の推進工学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　今回はサバテサイクルを題材にした問題でした。他の主要な熱サイクルと異なり、サバテサイクルは1工程多いので、純粋に計算量が増えてきます。

　本問ではよくあるP-V線図、T-S線図の描画や熱効率に加え、平均有効圧力に関する理解が問われています。

　いずれも解答方針は見えやすく、たいして考える要素はないのですが、計算量が多いのできっちり正解までたどり着けた人とそうでない人とでそれなりに分かれたのではないかなと考えています。

　主要な参考書を開けばサバテサイクルに対する考え方や計算方法はいくらでも載っていますが、1時間でしっかり計算しきることを考えると他の問題よりも少し難易度は高めかなと感じました。

　よって本問は少し難しめの★4つと判断しています。

第1問

　P-V線図にしろ、T-S線図にしろ、まずは熱サイクルの各過程における状態量を明確化する必要があります。計算結果は表にまとめておくとわかりやすいですし、熱効率を求めるときに多少楽ができます。

第2問

　熱効率の導出です。ここでは、別解も含めて2通りの方法を解答例では提供しています。但し、根本的にアプローチを変えているというよりは計算の工夫の仕方を変えているという感じになるので、検算の参考にする程度になると思います。

(解法1)

　愚直に解く。恐らく多くの方が選んだ方法ではないかなと思います。第1問で求めた各過程の状態量を基に、定義に従って熱効率の文字式を立式し、それを整理していくという方法です。

　あまり考えずに式変形を進めていくと計算がうまく収束せず、ミスの原因にもなるので、参考書を例に効率的に式変形できる方法を模索しておくとよいと思います。

(解法2)

　熱効率の計算前にε、σ、ρ、κを用いて文字を減らしておく。この方法のいいところはそもそも計算の序盤で文字数を減らす活動をしているので、全体的に計算量を減らせるのと、計算処理の過程が見えやすいので計算ミスがしにくくなると思います。

　思いついた人は多少時間節約ができたかなと思います。

第3問

　平均有効圧力の導出に関する問題です。まずは定義に従って平均有効圧力を他の物理量で表現してみましょう。

　後は式変形を進めて、最後に数値代入をすればよいのですが、ε、σ、ρ、κの値が問題文で与えられているので、最終的にはこれらの文字だけで平均有効圧力を表現する必要があると推測できます。