東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成22年の推進工学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
推進工学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/67962672816e614726a61364>
総評
ポリトロープ変化に関する問題です。熱力学的には重要なトピックなので、必ず大学の授業で習うはずです。また、主要な参考書にも載っているトピックなので、対策はしっかりしておく必要があるでしょう。
気体の等温変化はPV=一定、断熱変化はPVκ=一定(κは比熱比)で表せることは皆さんもうご存じかと思います。この関係式を基に、他の状態変化もPVn=一定という形で近似できるのではないかと考えた人がいるわけです。
このPVn=一定で表す近似的な状態変化をまとめてポリトロープ変化と呼び、この係数nのことをポリトロープ指数と言います。指数nは状態変化の種類によっていろいろ値が変わります。
問題構成の方を見てみるとなかなか興味深い小問が並んでいます。理想的な可逆熱サイクルでの計算結果と、実際に熱の授受で生じる損失を考慮したポリトロープ変化による計算結果の比較考察が出ています。
また、損失が発生する際のT-S線図の描画により受験生の熱損失に対する理解度合いを確認していますね。後半では等エントロピー問題との融合になっているので、先に圧縮性流体力学を固めておいた方が良いかもしれません。
難易度 ★★★☆☆
グラフの描画が少し難しい気もしますが、総じて基本演習をしっかりしていれば高得点も十分可能なラインナップになっていると思います。但し、前項でも少し言及しましたが、他の専門分野との融合も見受けられるので、演習する際には他の専門分野をある程度固めてから実施した方が良いと思います。
以上より難易度は標準的な★3つとしました。
解答の指針
第1問
1.
問題文で与えられたポリトロープ変化の定義に沿って計算を進めるとよいでしょう。断熱圧縮過程とほぼ同じ計算過程になるので、そこまで迷いは生じないはず。膨張についても同じ要領で計算はできます。
問題文で与えられている不等式をどのように数式に反映するかがポイントです。
2.
1→2、3→4の過程において熱的損失のある場合とない場合とでエントロピー変化の式計算を実施して比較検討するとよいでしょう。
グラフの書き方にも注意してください。
3.
1の結果を踏まえて、各過程の状態変化を整理しましょう。そのうえで熱効率の計算を定義に沿って実施すればOKです。
第2問
1.
ここで気にすべきは元々、全温T0、全圧P0の気体がノズルの出口付近で温度Tと圧力Pがどうなるか…ですよね?
であれば、この二つの状態を関係づける式の立式が必要です。どんな法則・考え方が適用できるか考えてみてください。
2.
理想的なモデルと実際の気体の挙動を比較考察する問題です。問題文に記載の通り、ノズルの内壁と気体との摩擦が生じるので、その影響を考える必要があります。
いきなり摩擦熱は求まらないので、まずは気体が吸収した熱量がどのような物理量で表すことができるのかを考えましょう(熱力学の第一法則ですね)。
気体は前問1の通り、全温T0、全圧P0の気体がノズルの出口付近で温度Tと圧力Pになるので、この状態変化を考える必要があります。
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