東大 航空宇宙工学専攻 平成18年 固体力学(午後)

固体力学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成18年の固体力学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

固体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679621f8bfa2872edfae50a9>

総評

 今回は塑性力学分野からの出題です。と言っても序盤は一般的な材料力学レベルの考察と知識問題なので、すべての問題が塑性力学分野からの出題というわけではないです。

 題材としては一様断面の棒が取り上げられており、この棒にかかる力とその変形に関する考察が主題となっています。

 題材だけ見れば市販の参考書を開けばどこでも載ってそうなのですが…鉄のヤング率や軟鋼の引張破断荷重のような知識を聞いてきたり、塑性不安定に関する考察が出ています。

 知識問題の方は…よほど材料に興味をもって普段から見ていないとそもそも解答は難しい気がします。また、この問題を通して受験生に何を問うてるのかイマイチ理解できませんでした。

 航空機や宇宙機によく使われるジュラルミン関連の特性ならまだしも、鉄の材料性質を見ている人は少なかったのではないかなと思います。

 後半の塑性不安定に関する問題は問題文でも色々ヒントはくれているので、解けなくはないかなという印象を持っています。

 また、金属材料に力が加わった時、最終的にどのようにして破断するかを理解しておかないと最後の問題の解答は難しいかもしれません。

難易度★★★☆☆

 全般的にはそれほど難易度の高い問題は出てないように思うものの、知識問題については少しやりすぎなんじゃないかなと個人的には感じました。

 受験生の正答率を適度にばらけさせ、大学学部時点で理解しておかなければならない専門的知識の理解度、大学院で研究活動を進めていくための思考力を試すという点では今一つ東大らしくない問題だと思いました。

 一般的に他大の機械系や航空宇宙工学専攻の入試問題と比較すると塑性力学分野は出題範囲になってないことも多く、解答に苦労した学生もいたかもしれません。そういう意味で、本問の難易度としては解答作成のしやすさ、知識問題の位置づけ、トピックの馴染みのなさを考慮して標準的な★3つとしました。

解答の指針

第1問

 部材にかかる最大せん断応力とその方向を答える問題です。本問は別解を含め2通りの解答を紹介します。

(解法1)

 トレスカの降伏条件を使う。計算的にはこの方法を使うとすぐに解答が出ます。あまり深く考える必要もないので、コスパ重視ならこの解法をお勧めします。なお、応力の方向はモールの応力円で導出できます。

(解法2)

 梁の断面に着目し、微小領域にかかる力のつり合いを考える。この手法の方が一般的な気がします。参考書にもよく載っているアプローチですね。

断面を斜めにしてその方向きも考慮して計算を進めれば応力の方向もわかります。

第2問

 軟鋼のヤング率が問われています。特段のヒントもなく、純粋に知っているかどうかで得点に差が出ます。

 個人的にはこの問題のヤング率を覚えるよりは、CFRP(宇宙機のセントラルシリンダやSAP、航空機の構造物に使われる材料)の特性やポリイミドフィルム(MLIによく使われる材料)、その他ジュラルミン関連の材料(ロケットや宇宙機の構体、航空機の主翼や胴体に使われる材料)に関する知識について整理した方が受験的にも将来の研究としても今後のキャリアとしても価値が高いと思います。

第3問

 引張破断荷重のおおよその値が聞かれています。この問題に答えるには軟鋼の最大応力を知ってないと解けないので、これも知識問題に類するものだと思います。

 第2問、第3問は落としてもあまり気にせず次の問題に言った方が良いでしょう。復習もそれほど力を入れなくてよいのではないかなと思います。(応用先も皆無ですし…)

第4問

 ここから塑性不安定に関する考察が始まります。問題文で重要な式が与えられています。これをうまく使いましょう。

 まずは、与えられた式をいじって加工硬化係数を導出しないといけなさそうですね。これを導出するには…物体が塑性不安定になるための条件に着目する必要があります。考えてみてください。

第5問

 前問の結果を利用するので、注意しましょう。まずはこの問題で与えられた式を変形して前問で出した加工硬化係数を導出していきましょう。

第6問

 これは金属材料に引張力を与えたらどのようにして部材が破断に至るかを説明する必要があります。これは知識問題の類ですが、金属の特性を理解するためには必要な知識なので、参考書や過去問を通してしっかり復習しておきましょう。

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