東大院 航空宇宙工学専攻 軌道力学対策

航空宇宙システム学

 こんにちは。宙野です。この記事では東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の院試の専門科目である軌道力学に関する対策をまとめた情報を提供します。

 専門科目の試験の全体概要については「東大 航空宇宙 専門科目について」という記事でまとめているので、そちらも参考にしていただければと思います。

出題の傾向

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の軌道力学分野は専門科目の航空宇宙システム学にカテゴライズされており、他にも航空機力学、制御工学が同じ分野から出題されます。

 近年こそ結構な頻度で出題されていますが、過去を振り返るとあまり出題されていない印象でした。

 昨今の産業的な盛り上がりも踏まえると出題頻度も高まっているので、対策の優先度は昔と比べてあがってきていると判断しています。

 私が過去にやった問題を振り返ると以下のようなトピックが出題されていました。

  • 楕円軌道と双曲線軌道
  • 円軌道
  • 宇宙機の運動方程式
  • 惑星スイングバイ
  • Hill方程式
  • ホーマン遷移

 あまりサンプルはないですが、円軌道、楕円軌道、双曲線軌道は典型的な問題だったりするので、比較的抑えやすいと思います。

 Hill方程式やスイングバイ、ホーマン遷移はザ・軌道力学という感じで、授業では必ず扱うトピックじゃないですかね。

 ホーマン遷移は宇宙機の軌道変更をする際の基本的な考え方なので、将来宇宙開発をやりたいと思っている方は知っておいた方が良いでしょう。

 Hill方程式は2物体のランデブー・ドッキングを考えるための基本なので、国際宇宙ステーション物資補給機HTV/HTV-XやETS-Ⅶの情報をネットで漁りつつ勉強をすると、モチベーションも上がるし論述対策もできると思います。

 スイングバイは惑星探査機や月面ランダーなどに関わる仕事をするなら必須の知識だと思います。アポロ12号、はやぶさ、New Horizonsなど、有名な宇宙機・探査機が実運用で使っているのでぜひ調べてみてください。

 軌道力学分野においてはどれも重要な要素なのですが、内容が難しいことを踏まえて王道的なトピックを優先して出題している印象を受けました。

難易度は?

 東大の大学院入学試験という観点において、軌道力学分野の攻略は難易度が高いと考えています。但し、私が受験生だった頃と比べると参考書も色々出てきて、海外の大学も含めて無料の授業視聴チャンネルも増えてきたので、大分勉強しやすくはなったと感じています。

 ただ、そうはいってもこの分野そのものが機械工学や他の専攻分野の学生から見ると、通常の大学の授業では勉強しない分野でもあるので、なかなかキャッチアップが難しいのではないかと感じている次第です。

 (そもそも学部の頃、航空宇宙工学分野を学んでいた私やその同期たちでさえ、この分野の学習については苦労していました。なので、どこの大学でも航空宇宙工学専攻の学生もそこそこ勉強に苦労している分野だと思います。)

どんな参考書がお勧め?

 まず、最初にお勧めするのがこの本ですね!個人的には軌道力学の対策をするにあたり、この本を最初に使って攻略を進めるのがいいかなと感じています。

 ・宇宙ステーション入門第2版 補訂版[狼 嘉彰/冨田 信之/中須賀 真一/松永 三郎] (東京大学出版会)

(出典:Amazon.co.jp)

 日本の軌道力学分野の本は大体古くてわかりづらいものが多いのですが、この本は軌道力学や姿勢力学に関するトピックが網羅されており、数式展開も丁寧に記述されているので、おすすめです。

 また、宇宙ステーションと言ってるだけあって結構有人宇宙開発関連のお話も載っています。

 著者の欄を見ていただければお察しかと思いますが、日本の軌道力学研究者の権威がそろって記述している本です。間違いなくこの本の著者の一人が東大の院試で軌道力学の問題を作っていらっしゃると思われるので、そういう意味でも一度やっておくことを強くお勧めします。

 次にお勧めするのが、「宇宙工学入門Ⅱ」という本です。培風館が出版していますね。

 ・宇宙工学入門Ⅱ宇宙ステーションと惑星間飛行のための誘導・制御[茂原 正道/木田 隆](培風館)

(出典:Amazon.co.jp)

 この本も非常にお世話になりました…。ランデブー・ドッキングやスイングバイについての記述をよく確認していました。

 また、カルマンフィルタやGPSシステムの仕組みについても記載されているので、これらのトピックも抑えておくとよいと思います。

 なお、シリーズⅠはロケットや衛星の姿勢制御に関するトピックが記載されており、制御工学分野の論述問題も含めて対策したい方は手を出すとよいと思います。

 最後に紹介するのはこの本になります。

 ・ミッション解析と軌道設計の基礎 [半揚 稔雄] (現代数学社)

(出典:Amazon.co.jp)

 これも大変お世話になったのですが、これは解答を作成したり、軌道力学の勉強を進めるうえで辞書的な活用をしていたものになります。

 正直、軌道力学については、この本より詳しく記載されている本はないのではと感じました(少なくとも和書においては)。

 色々紹介しましたが、1冊目と2冊目を中心に基礎を固めて、勉強の過程で必要に応じて3冊目の本を利用するのが個人的には効率が良かったです。

対策

 この分野はあまりなじみのないこと、専門書も豊富にはそろっていないこと、また他の分野との関連性は薄めであることを踏まえると対策は後回しでもよいと思います。(ただ、近年はそこそこ出題されているので、対策自体は必須かなと思います。)

 手始めに、軌道力学の基礎であるホーマン遷移や惑星運動を中心に勉強を進め、Hill方程式、スイングバイ、2体問題、3体問題、カルマンフィルタと軌道推定あたりまでが抑えられるとよいと思います(時間的に無理でも過去問で出題されているホーマン遷移、Hill方程式やスイングバイは必ず押さえましょう!)。

 過去問の解答自作にあまりにも時間がかかるようならいったん放棄して参考書を使った学習に注力した方が効率がいいかと思います。(本番まで時間が余るようなら解答作成作業に戻ってこればよいと思います。)

その他注意事項

 色々書きましたが、やはり軌道力学は難しいですね。受験当時、試験室で内部生の話を聞いていた限りでは軌道力学が出たら捨てると言っている人もいたので、内部生でも難しく感じる分野なのでしょう。

 但し、記事の中でも記載した通り、最低限の基本を押さえておけば他の受験生に致命的な差をつられることはなくなると思うので、基本事項は抑えるようにした方が良いと思います。

 英語を使うことに抵抗がないなら、海外の大学の授業なんかも参考になるので、視聴してみるよといかもしれません。

 本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 ではまた次回!

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