東大 航空宇宙工学専攻 平成23年 固体力学(午前)

固体力学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成23年の固体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

固体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679621f8bfa2872edfae50a9>

総評

 東大にしては珍しく小問なしの問題でした。片持ち梁に熱を加えることによる影響を考察させる問題です。ただし、梁の上面と下面では温度分布に差が出ているので、教科書にあるような標準的な問題と比較すると一工夫されているという印象を受けます。

 特に宇宙機は太陽光が当たっている時と当たってないときとでは数100℃程度の温度差が生じます。皆さんもご想像いただいている通り、この温度差が一様に分布されるまでには時間がかかります。本問ではそうした温度分布に差が出た際に製品を構成する部材にどのような影響が出るかを出題者は考えさせたかったのかなと推測しています。

 宇宙機の構造系に関わる研究や設計をやりたいと考えている方は是非一度考察してみてほしい1問ですね。

難易度★☆☆☆☆

 見慣れない状況設定ではあるものの、計算量もそれほど多くなく、思考力もそれほど深いものを求められているわけではないので、難易度は優しいと判断しています。また、別解の豊富さからみても解答の正確性を評価しやすいという点も考慮して★1つとしました。

解答の指針

 今回私が冒頭のリンクで紹介した過去問集で提示している解答例では別解を含めて3通りの解法を紹介しています。

(解法1)
 梁の曲率と応力の関係を立式し、計算する。
 恐らく受験生の多くがこの解法を選択したのではないかなと思います。一番オーソドックスな解答です。
 題意より、梁には温度差のある熱応力がかかっていること、梁は片持ち梁であることから、自由端では梁が曲がることは想像に難くないと思います。

 上記の状況を踏まえて地道に立式して計算すれば答えにはたどり着けます。

(解法2)
 仮想仕事の原理を使う。
 個人的にはこの解法が一番現実的かなと思います。この解法を思いついた方は解法1と比べて時間節約と計算ミスのリスクを減らせるので、試験本番では優位に立ち回れたのではないかなと思います。解法そのものも教科書通りの立式で答えまで持っていけます。

 有名な解法でもあるので、材料力学の勉強をしている学生であれば知らない解法ではないはずです。
思いつかなかった方は教科書や参考書を見て復習するとよいでしょう。

(解法3)
 梁の微小領域に着目し、近似計算をする。
 題意より熱による温度分布が生じていますよね?
 そうすると梁がたわむわけですが、このたわみの状況を微小領域で描写できると実はほぼ計算することなく答えにたどり着けます。

 自分で思いついておいて言うのもなんですが、この解法を使うと解答自体は5分で完結できるでしょう。状況設定の理解や考察を含めたとしても見直し込みで30分あれば完答できます。

 受験本番の限られた時間で30分の時間節約は絶大なインパクトを与えます。いつも使えるわけではないですが、こういう考え方もあるのか…という観点で是非一読いただきたい解法です。

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