東大 航空宇宙工学専攻 平成21年 航空宇宙システム学(午後)

航空宇宙システム学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成21年の航空宇宙システム学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

航空宇宙システム学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679620e7bfa2872ebcae4fde>

総評

 平成21年は宇宙機のランデブー・ドッキングを題材にした問題が出題されました。本問の題材となっているHill方程式はホーマン遷移、惑星スイングバイ、(制限)三体問題と並ぶ軌道力学の重要トピックですので、抑えておくようにしましょう。

 この年は国際宇宙ステーション向け物資補給機HTV(愛称「こうのとり」)の初号機の打ち上げが9月に実施されました。

(出典:JAXAホームページより)

HTV 外観図

 無人ではあったものの、国際宇宙ステーションという有人宇宙システムに対し、物資補給を完了させました(アジアとしては初めての実績だったはずです。)。これに伴い、ISSプログラム及びArtemisプログラムにおいて日本の存在感が高まり、宇宙飛行士の募集や月面有人宇宙探査の足がかりができたわけです。

 日本の有人宇宙開発史上重要なイベントだったので、これに関連したトピックとして出題されたのではないかと推測しています。

 ちなみにですが、HTVはISSの近傍までランデブーした後、ISSに取り付けられたロボットアーム(SSRMS)にてキャプチャされ、ドッキングします。

 2024年12月にはHTVの後継機であるHTV-Xの電気モジュール部分(通称:Service Module)の開発が完了し、現在種子島にて射場の作業が進行中です。なお、与圧モジュール(通称:Pressurized Module)は開発完了済のようです。

参考URL(SM):<https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20241217_n01/>

参考URL(PM):<https://humans-in-space.jaxa.jp/htv-x/news/pressurized/230701.html>

 このような状況を踏まえると、どれだけ遅くとも2025年度中には打ち上げられるのではないかなと思うので、2025年、2026年の入試問題ではランデブードッキングに関するトピックは最大限警戒しておいた方が良いでしょう。

難易度 ★★★★☆

 計算量自体は大したことないのですが、宇宙機の挙動がなかなかイメージしづらいところでもあるので、敬遠したり、解答ミスをした人がそれなりにいるのではないかなと推測しております。

 少なくとも大学で軌道力学を学んでこなかった受験生からするとかなりきつい問題になるかなと思うので、難易度は高めの★4つとしました。

解答の指針

 第1問

 問題文では定性的に説明せよと言っているので、必ずしも数式で示す必要はありません。物体Bがx軸正方向に増速した際の挙動を説明しましょう。

第2問

 題意の条件を数式に落とし込み、問題文で与えられた行列式に入れてみましょう。

第3問

 第2問の結果を利用すると解けます。

第4問

 基本方針は第2問と同じでよいかと思います。題意の軌道が得られるかどうかをどうやって評価するかがポイントですかね。

第5問

 これも第2問と同じ戦略で解答までたどり着けます。本問は全般的に問題文で与えられたHill方程式を実際に受験生に使わせて考察させることを重視している印象を受けます。

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