東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成15年の推進工学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
推進工学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/67962672816e614726a61364>
総評
今回は円板の捩じりが題材になっております。振動工学分野の出題には大きく分けると、この捩じりによる振動とばね-マス-ダンパ系の単振動、弦の振動の3つのタイプに分類できます。いずれもよく出るトピックなので、ヤマをはらずにすべての分野に対して準備をしておく方が良いでしょう。
本問では3つの円板が棒で接続されており、ある円板がねじれた時の他の円板への影響を考察させています。
何となく航空機のエンジンを模したものをモデル化しているような印象を受けます。
小問構成は3問と控えめな設定になっているものの、少し計算量が多めな感じですね。解答への道筋は比較的付けやすいかと思います。第3問については少し考えないといけないかもしれません。
難易度 ★★★☆☆
いずれも標準的な内容が問われており、しっかり計算できていれば解答までたどり着けるようになっています。
円板が3枚あるというのが少し見慣れない状況設定かもしれませんが、ここは応用力が問われているように感じました。
解答にかける時間配分を1時間と想定した場合、解答の道筋が立てやすい分、完答も不可能ではない時間配分かなと感じます。
よって難易度としては標準的な★3つとしました。
解答の指針
第1問
お決まりの立式ですね。問題文の状況設定を基に図を描くとイメージしやすくなると思います。
第2問と異なり、両端の円板が固定されています。両端の円板が固定されている状況で真ん中の円板がθだけねじれると…どんな式が立式できるでしょうか?考えてみてください。
また、問題文では固有振動数を聞いているので、固有角振動数と混同しないように注意が必要です。固有角振動数を答えると…まぁ、減点されるでしょうね…。
第2問
第1問の応用で、今度は両端の円板が固定されなくなります。ここで混乱したともいるかもしれませんが、要は2つ以上のばねがついているばね-マス系と似たようなロジックで立式ができます。解答に困った場合は意識してみてください。図を描いて考えることも忘れずに!
ここは応用力が問われそうですね…。
第3問
軸が単位長さ辺りμの慣性モーメントを持つ云々…と問題文で条件設定がされていますね…。もうこの時点でめんどくささが漂っていますが…。
勘のいい人はこの段階で棒の微小領域を考える必要がありそうだな…と想像したかもしれません。
…ところで…皆さん気づきましたか?正面突破しようとすると大分計算が爆発しますが…本問はレイリーのエネルギー法が使えます。
ここでは2つの解法を紹介します。
(解法1)
レイリーのエネルギー法を使う。…これに気づけた人は少しの時間の節約と計算ミスのリスクを減らせたかと思います。
棒の弾性エネルギーと運動エネルギーについて考えましょう。運動エネルギーについてはお察しの通り、回転による運動エネルギーになりますよね?そして今、単位長さ辺りμの慣性モーメントがかかっているので、これを基に棒全体の運動エネルギーを求めましょう。
あとは出てきた式を固有角振動数について解いた後、固有振動数を求めればよいわけです。
忘れがちかもしれませんが、エネルギー法はそれなりに使える道具なので、計算が面倒くさそうと感じた時にこの方法が使えないか一度考えてみるとよいと思います。
(解法2)
3つの円板を支える棒(軸)がθだけ回転したと仮定して、微小領域におけるモーメントのつり合いの式を立ててみましょう。そうすると、モーメントM、位置x、時間t、回転角θの偏微分方程式が出来上がります。
あとは境界条件を整理しつつ、この方程式を解いていけば答えが出ます。
但し、まぁまぁ計算量が多いのでこの方法はなるべく取りたくないですね…。
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