東大航空宇宙工学専攻平成17年推進工学(午前)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成17年の推進工学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　今回はブレイトンサイクルからの出題でした。ブレイトンサイクルは推進工学分野では頻出トピックなので、入念に対策しておくことをお勧めします。

　ブレイトンサイクルはガスタービンエンジンの理論モデルとして使われているもので、航空機エンジンの理論モデルとも言える題材です。

　本問で記載されている図1は何も見なくても白い紙に自分で図を描ける状態にしたうえで、以下の作業が流れ作業でできるレベルまで習熟しておくとよいでしょう。

・P-V線図を描く

・T-S線図を描く

・熱サイクルを構成する各状態量及び状態変化も整理する

・熱効率を導出する

　但し、本問はブレイトンサイクルの基礎理解確認では終わらせず、再生サイクルの概念と考え方にまで言及しているので、受験問題としては一捻り加えているという印象を受けます。最後の1問は受験生間で正答率に差が出たかもしれませんね。

　問題構成としてはお決まりのP-V線図描画、T-S線図描画、熱効率の導出で前半がまとめられており、後半の問題で理論的な熱効率と実際の熱効率との差異に関する考察と、再生サイクルに関する論述問題が出題されています。

　後半から少し難易度が上がってくる印象を受けるものの、全体としてはそこまで受験生に大きな差がつかない1問となったのではないかなと考えています。

　よって、難易度としては標準的な★3つとしました。

第1問

　P-V線図の描画ですね。単に図を描くだけではあるものの、この後熱効率を導出する必要があるので、各状態での状態量を算出してまとめておいた方が良いでしょう。

　私が提示した解法では熱力学第一法則に従って、表を作るという方法をとっています。是非参考にしてみてください。

第2問

　第1問と同じようにT-S線図を描いていきます。第5問の考察で利用する可能性があるので、各状態におけるエントロピー変化も算出してまとめておくとよいでしょう。

第3問

　熱効率の導出です。第1問において、表でまとめていれば、どの値を使って計算すればよいかがすぐわかるので、計算ミスのリスク低減と思考時間の削減を期待できます。

　正直、第1問～第3問まではほぼ何も考えなくても勝手に手が動くレベルで習熟しておいた方が良いでしょう。熱力学分野では定番中の定番パターンなのと、どうせどんな問題でも熱効率は聞いてくるのですよ。システムの性能に大きくかかわる要素ですからね。

第4問

　この問題はすごく重要です。大学で教科書通りの理論を学んでいても実際にはその理論通りの結果にならないことが多いのは受験生の皆さんであれば学生実験や研究活動を通して嫌というほど理解しているかと思います。

　本問はそうした理論通りの挙動を示さない原因やその理論に近づけるための工夫ポイントを聞いてきているわけですが、研究の動機やエンジニアとしての仕事にも大きく影響を与えるトピックなので、本問以外にもこうした考察は日ごろから実施していただくとよい経験になると思います。

第5問

　再生サイクルについての質問です。詳細は参考書やネットを調べればいくらでも出てきますが、ポイントとしては、”ブレイトンサイクルとシステムコンフィギュレーションでどのような部分に違いがあるのか？”という観点で比較検討をする必要があります。

　また、上記の差分について問題文の指示通り、T-S線図に基づいてその違いを説明しましょう。

　最後に、問題文には再生サイクルの効果について言及していますが、熱サイクルのパフォーマンスは基本的に熱効率をベースに考えますよね？なので、ブレイトンサイクルと比較した時に、再生サイクルの熱効率がどうなるのかについても言及しておく必要があると考えています。