東大航空宇宙工学専攻平成20年固体力学(午前)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成20年の固体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　今回の問題はなかなかクセの強いものが前半に入り込んでいます…。アルミ合金に関する知識問題ですね…。

　これはなかなかしんどかったのではないでしょうか？材料力学や弾性力学、塑性力学に基づく理論やその計算は参考書や過去問を通してやり込んでいるとは思いますが、この手の知識問題は自分で意識して勉強していないとなかなか手が回らない気がします。

　さて、後半部分の問題ではいわゆる軸対称平面応力問題が出題されています。この問題はラーメの式を導出なしに使ってよいとヒントが出ていますが、導出そのものもできるようにしておきましょう。

　問題自体は円環の内外にかかる力の考察や、円板の圧入による考察をさせてきています。

　いずれも弾性力学や塑性力学を勉強していれば習うような基本的な知識を使って解いていけるので、後半部分については、解けた人は多いのかなと考えています。

　分野的には知識問題+弾性力学が主だとは思うのですが、出題者としては最終的に降伏条件に関する考察に受験生を誘導したいと考えているようでしたので、本問の解答において分類上は塑性力学として整理しています。

　大分迷いましたが、やはり前半部分の問題がしんどいと思います。ここは単純に知っているかどうかで差がついてしまうことと、この問題に対応できた人がそれほど多くはないのではないかなと感じたためです。

　但し、後半部分はしっかり固体力学分野の対策をしてきた人であれば解答していける内容になっているので、総合的に見れば標準～やや難くらいの問題なのかなという印象を受けます。

　というわけで、本問の難易度については難しめの★4つとしました。

第1問

1,2,3

　それぞれ個別の知識問題なので、具体的な解説については省略します。参考書やネットで調べると周辺知識が身につくので是非自力で調べるという行為もしてください。

　参考ですが、航空機、宇宙機に利用される材料という観点で少し補足情報を記載しておきます。

　東大航空宇宙工学専攻の固体力学分野ではこの手の材料に関する知識問題がたびたび出題されています。少ししんどいですが、航空宇宙分野でよく使われる材料についてはその特性や材料加工時の処理に着目して情報をまとめておくとよいでしょう。

　特に今回のようなジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンについてはロケットや宇宙機では、構体部分に使われます。特にロケットは重量を軽減するためにアイソグリッド構造にしてロケットの胴体部分利用していることが多いです。

　航空機でも胴体部分や主翼部分にアルミ合金が使われていたりします。あとはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)やポリイミドフィルム等も併せて調べておくとよいでしょう。

　CFRPはアルミ合金よりも軽くて丈夫ということで、近年航空機のアルミ合金が使われている部分に徐々に適用されるようになってきている注目の素材です。

　宇宙機では、衛星のセントラルシリンダやSAP(Solar Array Panel)に使われていたりもします。また、CFRPはハニカムパネルにすることで軽量化と硬度の維持向上をしていることが多いです。

　一方ポイリイミドフィルムはMLI(Multi Layer Insulation)に使われている材料で、主に衛星の断熱材として使われています。

第2問

(1)

　円環内の周方向及び半径方向の応力を導出せよと言われています。問題文にはラーメの式を使ってよいと記載されているので、この式を利用すれば求める式が導出できるというのは想像に難くないと思います。

　但し、ラーメの式には定数A,Bが入っているので、この定数の具体的な中身を確定させるのがこの問題の考察ポイントになります。

　本問で出題されている部材にかかる力を図示して考察を進めましょう。また、式が与えられて、定数を求めればよいので、ラーメの式の境界条件を考えればよさそうですね。

(2)

　これは少し考える必要があります。今、円環は平面応力状態にあるので、半径方向変位uと半径rを用いて半径方向、周方向の歪を表現できると思います。

　また、これらを用いてラーメの式との関係式を立式できるので、これを整理すると…問題が解けそうですね。

(1)

　これは前問までの考察を利用する必要があるでしょう。但し、前問と違って今は円板が圧入されているので、これを考慮に入れて半径方向変位uとラーメの式を利用しましょう。

(2)

　トレスカの降伏条件について整理する必要があります。まずは周方向及び半径方向応力についてトレスカの降伏条件を図示しましょう。

　後はこれを基に条件を整理していけば大丈夫です。