東大航空宇宙工学専攻平成22年流体力学(午前)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成22年の流体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　垂直衝撃波を題材にした問題が出題されました。衝撃波の問題は大体この垂直衝撃波か斜め衝撃波あるいは圧縮性流体力学の実験装置に関する題材が取り上げられがちな印象を受けます。

　今回は問題文でヒントとして連続の式、エネルギー保存の式、運動量保存の式が与えられています。

　また、本問ではレイリーのピトー管の公式に関する知識が必要になります。知らなかった方はこれを機に学習を進めてみてください。

　全体としてはそこそこの計算量、そこそこの解答の見通しのよさが確保されており、圧縮性流体力学をしっかり学習していれば十分解答できる内容かなと感じました。

　終盤のレイリーのピトー管の公式に関する理解力については知識理解も必要となるので、知らないと解答がきつくなると思われます。

　以上を踏まえると受験本番であれば最後の考察問題を除き、ほぼ満点に近い得点が十分可能と思われます。但し、緊張や焦りからくる計算ミスは十分ありうるので、注意したいところです。

　難易度としては標準的な★3つとしました。

第1問

　運動量保存の式とエネルギー保存の式から圧力比と温度比を求める問題です。これは主要な参考書ならどこでも載っているレベルの問題なのでサービス問題に相当するものです。

　問題文で連続の式、運動量保存の式、エネルギー保存の式が与えられてなくとも、自分で図を描いて式を立てるところからスラスラ圧力比と温度比がマッハ数の関数で表現できるレベルになるまでよく練習をしましょう。

第2問

　u₁u₂=c²_*を導出する問題です(c_*は音速状態)。これはノーヒントだと正答率が下がると出題者が危惧したのでしょう。問題文にかなり丁寧な誘導が載っています。

　問題文の指示通りの変形を進めれば解けます。

第3問

　これも重要な問題です。しっかりできるようにしておきましょう。与式と前問の式の結果を用いると、衝撃波前後の流体の速度比が出せます。

　この結果を連続の式に入れれば密度比が出せます。

　この問題では衝撃波前後の流体について密度比、速度比、静圧比、総圧比を求め、それをM₁のみで表す必要があります。

　マッハ数M₁とM₂に関する関係式を立式し、M₂について解いたら…第1問の結果を用いて静圧比が出そうです。

　総圧比はエントロピーの定義に従って式変形を進めつつ、これまで求めた計算結果を代入すれば…答えにはたどり着きます。

　計算量の観点から見ると少し難易度は高めかもしれません。

第4問

　これはただの求値問題です。特に難しくはありませんが、前問ができていないと正解できないようになっているので、第3問を解いた人に対するサービス問題のようなものかなと思います。

第5問

　これも求値問題です。但し、第3問でマッハ数の関係ががしっかり導出できていないと正解にはたどり着けません。

　第3問におけるマッハ数の関係が正しく導出できるかどうかで受験生の間で大きく点数が開いたのではないかなと思います。

　本問は究極的にはマッハ数の最大値最小値問題になるので…要は数学の問題ですね。数学で関数の最大値最小値問題を求めるときにはどのような手法を用いるのかを考えてみてください。

第6問

　ピトー管の前方に衝撃波が出ているときの総圧変化を考察する問題です。

　第3問の結果を用いて図を描いてみましょう。この状況で衝撃波前後の総圧について考えてみるとよいでしょう。

　また、一様流は超音速流れだと問題文では指定されているので、これを式に反映して考えてみましょう。