東大航空宇宙工学専攻平成23年流体力学(午前)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成23年の流体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　今回題材となったのは斜め衝撃波でした。斜め衝撃波は、平板翼やひし形翼の周りに生じる衝撃波等で観測することができます。

　衝撃波の特性を理解するうえでは重要なトピックなので、しっかり復習をしておきましょう。

　前半は斜め衝撃波に関する幾何学的な関係に着目すれば解けるような問題になっており、垂直衝撃波との違いに関する理解が問われています。

　後半では衝撃波の傾きと衝撃波後の流体の角度に関する理解が問われています。また、本問を通して、付着衝撃波と離脱衝撃波の違いについても問われているので、よく復習しておきましょう。

　いずれも斜め衝撃波に関する問題としてはよく問われるタイプの問いなので、復習をしておけば他の問題に対する対応力も挙げられると思います。

　全般的には斜め衝撃波に関する基本的な問題が出題されています。但し、グラフの描画や最後の考察問題は1捻りされており、少し考えないと正解にはたどり着けないようになっています。

　計算量としてはそれほど多くなく、制限時間の多くを解答の方針検討や考察に割けるよう配慮されていると感じました。

　いずれの問題も、受験生の理解力によって適切に正答率がばらけるよう配慮されていると感じる一問でした。

　以上より、本問の難易度としては標準的な★3つとしました。

第1問　

　衝撃波に垂直な成分に関する衝撃波前後の流体の速度に関する関係式の導出が求められています。まずは図を描いて流体の速度を衝撃波に垂直な成分と平行な成分に分解して整理しましょう。

　問題文のヒントで垂直衝撃波が起きているときの流体の衝撃波前後における速度成分が与えられているので、これをうまく用いると楽に解答ができます。

第2問

　第1問と同様、図を描いて整理するとよいでしょう。衝撃波の前後において流体の速度成分を幾何学的関係に着目して整理すると答えにたどり着けると思います。

第3問

　第1問と第2問の結果を利用すると、角度θをβ、M₁、γで表せます。あとはθについて解いた後、題意に沿う形で値を入れて計算すればよいでしょう。

　グラフを書く際は式の特徴がわかるように注意して描きましょう。必要なら最大値、最小値、変曲点などの算出を検討しましょう。

第4問

　これは…なかなか考えさせられる問題です。楔の先端を切断した際に衝撃波がどのように変化するかを考察させる問題です。

　楔物体に生じる衝撃波は第1問～3問で考察した斜め衝撃波になるのですが…楔の先端が切断されると…物体の先端の角度が変わります。

　ここで第3問の考察が活きてきます。第3問で考察した式のβとθの取りうる値の範囲に着目し、本問の設定がどのように適用できるかを考えてみましょう。