東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成23年の推進工学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
推進工学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/67962672816e614726a61364>
総評
水撃(ウォーターハンマー)現象を題材にした問題です。問題文にて説明がなされている通り、この現象は管内を流れる流体の流速が急激に変化することで管内の圧力が過渡的に上昇または降下する現象のことを指します。
弁の閉鎖やポンプの急停止等により、水撃現象が引き起こされることがあります。もう読者の皆様はご想像されているかもしれませんが、この現象が発生すると、管内圧力の上昇によりポンプ、バルブ、継手、配管等の破損や、管内圧力の降下により配管が凹んだりします。
液体だけでなく、気体に対しても生じる現象なので、航空機、宇宙機の推進系に関する技術検討する際にも注意を要する現象です。
全般的に計算量は少なく、丁寧な状況説明や誘導により回答がしやすくなるよう配慮されている印象を受けます。第5問にて配管が剛な場合と弾性管の場合で水撃の影響がどのようになるかを質問しています。おそらくこの問題が出題者が最も見たかった解答部分なのかなと感じています。
難易度 ★★☆☆☆
小問としては全5問構成で、適宜前問の結果を利用しながら解答を進めていくスタイルになっています。状況設定と各小問にて細かな説明が記載されており、丁寧な誘導が設定されております。
そうした誘導に沿って解答を進めれば比較的早く解答にたどり着けるため、難易度としては易しめの★2つとしました。
解答の指針
第1問
問題文の指示通り、連続の式と運動量保存の式を与えられた図を基に立式しましょう。一般的に問題設定の序盤では連続の式、運動量保存の式、エネルギー保存の式の3つを手掛かりに問題の考察を進めることが多いです。
本問は丁寧な誘導により、初手で上記のうちの2つの式を立式するよう指示が出ていますが、こうした誘導がなくても回答に迷った際にはまず上記の3つの式を基に考察を進めると解答の指針が見えることがあります。
第2問
前問の結果を利用しましょう。特に問題文に指示が出ていませんが、第1問の立式の前提にもなっているので、微小量の近似は実施してよいと思います。
第3問
前問の結果を基に式の整理を進めれば解答にたどり着けます。
第4問
まずは、弾性管と剛な管とではどのような物理量が式に影響を与えるのか考えましょう。
本問では伝搬速度aの違いを考察することが求められているので、上記の前提を第2問の式に反映して考察をすればよいと推測できます。
第5問
管内の圧力変化を流体の密度、流速、圧力波面伝搬速度で表すよう指示が出ています。
それぞれの物理量の関係性は第1問で導出した関係式にすべて記載されているので、第1問を連立させれば答えにたどり着けることは容易に想像できます。後は式の整理を進めましょう。
コメント