東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成23年の固体力学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
固体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679621f8bfa2872edfae50a9>
総評
薄肉円筒が題材として選ばれました。但し、単なる薄肉円筒の考察ではなく、側面に穴が開いた薄肉円筒を考察させてきています。
東大の航空宇宙工学専攻ではこの薄肉円筒のトピックがたびたび出題されています。この題材が良く選ばれる理由ですが…航空機やロケット、その他国際宇宙ステーションなどの有人宇宙システムの構造が薄肉円筒(に近い形)になっているので、こうした構造物の解析をするときの基本となる考え方だからなのかなと推測しています。
本問は3つの小問で構成されています。第1問は内圧のある薄肉円筒にかかる応力成分の導出を求める問題です。第2問は円環側面に穴をあけた場合の穴の周りにおける周方向応力成分の表示と図示。第3問は前問にねじりを加えた際の円孔縁の周方向応力成分の導出です。
いずれもすぐには解答方針が立ちづらいので、微小領域に着目して、図示による力の整理をするとよいでしょう。また、小問も少ないので、1題解けなくなるだけで受験生の間では大きな点差がつくことが予想されます。
なお、本問で取り上げられている円孔縁の追加ですが、おそらくこれは航空機の窓を題材としているのではないかなと思います。皆さん、航空機の窓がなぜ丸いか考えたことはありますか?これにもちゃんとした理由があるのですが、出題者は受験生に航空宇宙産業で利用される構造物を注意して観察してもらうことを意識しているのではないかなと推測しています。
難易度★★★★☆
全般を通して、難易度は高めと考えています。薄肉球殻は材料力学でもよくやるのですが、薄肉円筒になると、あまりやり込んでいない人も多くなってくる上に今回は側面に穴をあけるという一工夫が入っています。
問題構成も少なめなので、1問の失点による影響が大きく、受験本番では解答作成に多くの時間が使われたのではないかなと考えています。
但し、薄肉円筒自体は東大の航空宇宙工学専攻でもよく出題される題材なので、これを機に勉強を進めて欲しいです。
以上より、本問の難易度は難しめの★4つとしました。
解答の指針
第1問
まずは状況を正確に把握するために薄肉円筒の微小領域に着目して、力のつり合いを図示しましょう。円環の内側が軸方向含めて描けていれば必要な力の整理はできると思います。
ここは薄肉球殻の考え方を流用して解答していけると思います。
第2問
円柱に穴をあけています。ものとしては円筒形状なのですが、穴の開いた側面を拡大すれば、十分に広い薄い平板とみなせます。なので、円筒側面の平面応力に注目して式の整理が必要です。
円孔縁の周方向は角度Φで規定していますが、円筒側面そのものにかかっている平面応力はz方向のものとθ方向のものとがあるので、これらを関係づける必要がありそうです。
第3問
考え方は第2問と同じような戦略が取れます。但し、今回はねじりを加えているので、せん断応力が発生しています。
問題文ではΦ方向応力の最大値と最小値を求めるよう指示が出ています。なので、応力の計算ができたら後は数学の知識を使って、関数の最大値・最小値問題に落とし込めれば答えまで導き出せると思います。
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