東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成25年の推進工学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
推進工学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/67962672816e614726a61364>
総評
本問を構成している問題の前半部分ではブレイトンサイクルを題材とした問題になります。このトピックは度々取り上げられているので過去問演習や参考書を通してしっかり復習しておきましょう。
中盤ではブレイトンサイクルの改良版として再生サイクルを取り上げ、考察をするようなメニューになっています。
終盤では火力発電を例にしてガスタービンコンバインドサイクルについての考察が求められています。
全体の印象としては、構成されている問題数が多く、時間内に解答しきるのは少し難しいという印象を受けます。
図やグラフを用いて情報を整理しながら効率的に計算を進めていく必要がありそうです。
難易度 ★★★☆☆
答えを導出するために実施する計算量はそれなりに多いものの、各問題を小分けにすることで部分点を狙いやすいような構成になっています。
再生サイクルやガスタービンコンバインドサイクルなど、実学を意識したトピックが取り上げられているので、こうした問題でどれだけ点数が取れるかが、得点の差につながっているという印象を受けました。
とはいえ、しっかり分野別対策をしていればそれなりに点数は取っていけるような問題構成になっていると思いますので、難易度は標準的な★3つとしました。
解答の指針
第1問
1.
問われている内容を踏まえると、ブレイトンサイクルを構成するすべての状態変化を整理する必要があります。各状態における状態量を算出し、表にまとめておくと解答しやすいと思います。
熱効率は整理した結果を基に、定義に基づいて計算を進めればよいだけです。
この問題は他のよくある過去問と同様、教科書通りの熱効率の計算結果を導出できればよいので、早々に片づけたいところですね。
2.
前問の結果を基に圧力比と比熱比で表現できるように式変形を進めていきます。
言葉で表現する文には簡単ですが、計算で示すのはそこそこ時間がかかります。やり慣れてないと手間取るので、参考書等を通じてこうした式変形はあらかじめ習熟しておく必要があります。
3.
前問より、比出力は圧力比の関数として表現できています。比出力を最大にするときの圧力比の値について聞いてきているので…もはや本問は数学の問題ですね。
比出力が圧力比の関数として表されるとき、どのような手法を使えば最大値、最小値評価ができるのか考えてみましょう。
4.
これは…しんどいと思いますね…。正答率も低めなのではと推測しています。
問題文にはヒントとしてT2→T3の極限で熱効率が最大になるとの記載があります。この情報を基にP-V線図を描いてブレイトンサイクルがどのようにしてカルノーサイクルへ変化するのかを考えてみましょう。
また、1.でブレイトンサイクルの熱効率を求めているので、これがどのようにしてカルノーサイクルの熱効率に近づくのか、式を見比べて考察を進めてみるとよいでしょう。
第2問
1.
再生サイクルの概念が問題文の説明で提供されており、ご丁寧にT-S線図まで与えられています。これらを基に再生サイクルにおける気体が吸収した熱量と放出した熱量を温度を用いて表現できれば答えが出ます。
2.
これは知識問題ですね。参考書などを通して再生サイクルに関する理解を深めておきましょう。
第3問
1.
これも第1問の4と同様、考察には時間がかかりそうですね。問題文にはヒントとして、熱機関1、2を含む系を1つの熱機関システムとしてみなすという趣旨の記載があります。
この情報を基に熱機関1,2の熱効率をうまく使って全体システムの熱効率計算に反映させる必要があります。
図3をよく見てみましょう。熱機関1,2を1つの熱機関としてみなす場合、この統合された熱機関に入力される熱量は…何になりそうですかね?また、最終的に低温熱源に出力される熱量は…いくらでしょうか?考えてみてください。
2.
ここまで来たら若干のサービス問題になっている印象を受けますね 笑。前問の結果を利用すれば同じような計算ロジックで答えが出そうです。但し、前問の設定に加えて、燃料電池による熱効率を考慮する必要があります。
個人的には最新の研究状況と絡めて出題される院試問題は大学授業で学ぶ理論が実学レベルでどのように使われているのかを知る機会になるので、普段の勉強でも積極的に取り組んでいきたくなるような問題だと感じます。
是非、本問を通して研究の面白さや実学における利用方法について目を向けてもらえたらと思います。
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