本記事では、読者の皆様が勉強する際に利用する参考書の選び方について筆者の考えをお伝えできればと思います。
参考書は種類も豊富なうえに利用者によって様々な使われ方がされています。利用方法を間違えると思ったような効果が出なかったり、やらない参考書が積みあがるなんてことも起きたりするので注意が必要です。参考書をうまく選べるようになることで自身の勉強を効率的に進めることができるようになるでしょう。
なお、本記事にて記載している考え方は私が大学受験で浪人していた頃から実践している考え方です。大学受験において予備校の模試で物理の偏差値が29だった頃からこの方法で偏差値72まで引き上げることができましたし、大学での授業や大学院受験、また社会人になってからの自己研鑽でも大いに役立っている考え方です。
参考書を使う目的を明確化しよう!
参考書を選ぶにあたって皆様に必ずやっていただきたいことは、参考書を購入する目的を明確化させることです。
この目的の明確化を疎かにすると、必要とする参考書を見つけるのに時間がかかったり、購入した参考書が自分の求めるものではなかったがゆえに別の参考書を買い直すということが起きかねません。
色々な目的があるかと思いますが、私の経験上、以下のような項目に分類できると考えています。
- 教科書に記載されている内容の補足をするためのもの
(あるいは教科書の代わりになりうるもの) - 問題演習を積むためのもの
- 上記の作業を進めていくうえで利用する辞書や資料集のような使い方をするためのもの
表でまとめるとそれぞれ以下のようになります。
表. 参考書の位置づけと選定基準
参考書の種類 | 対象者 | 判断ポイント | |
1. 教科書の補助 | 授業がわからない人 独学する人 | 説明が丁寧に記載 図表やグラフが豊富 | |
2. 問題集 | 2-1. 基礎 | 基礎演習をしたい人 | 解答・解説が豊富 7~8割の正答率 |
2-2. 標準 | 入試の標準問題の 演習をしたい人 | 解答・解説が豊富 5~6割の正答率 | |
2-3. 発展 | 得意科目として やりこみたい人 | 志望校の傾向に 則した発展問題 | |
3. 辞書的な利用 | 高難易度入試問題に 対応したい人 | 網羅的な目次内容 詳細かつ丁寧な解説 |
では、順番に詳細を見ていきましょう。
- 教科書に記載されている内容の補足をするためのもの
これは中学・高校や大学が指定する教科書を使っても授業についていけていない、あるいは自学自習で勉強しなければならない人が該当すると思います。
このタイプの本を探すタイミングでは学習内容のアウトプットをする練習というよりもインプットを重視するとおもいます。なので、本目的で参考書を探す場合は、なるべく説明が丁寧にされている参考書を選ぶ必要があります。特に図表やグラフなどが豊富に載っており、学習内容が視覚的にイメージしやす工夫されているものを中心に探すとよいと思います。
逆に学校が指定する教科書が簡単すぎる、または自身の目的としている志望校に向けた対策では不十分と考えている人については下記3項と併用して、自身の求める学習内容が記載されている参考書を選んだほうが良いでしょう。 - 問題演習を積むためのもの
この2項に当てはまる人はどちらかというと既に学んだ内容の理解度確認と応用力をつけるためにアウトプットをしたいと考えている人が該当すると思います。
2-1. 基礎演習を積みたい人
まず、授業や参考書を通して学んだことについて基礎的な内容を中心に演習を積みたいと考えている人ですが、これに該当する人は問題集の解答解説がどれだけ丁寧に記載されているかに着目して本を選んでみてください。
私の経験上、大体問題集全体の半分程度が解答解説のページに割かれているものは図表やグラフも交えて丁寧に解説していたり、式変形も丁寧に書いている他、解答のためのアドバイスが豊富に記載されている場合が多いです。
また問題集ですが、基礎演習を積みたい方は問題集の中身を見た際に、7~8割程度の正解が見込めそうな本を最初に選ぶとよいかと思います。目的はあくまで基礎の確認が主なので、正答率が高めになる参考書を選ぶという方針でよいと思います。
難しすぎるものを選んでも挫折の原因になる他、基礎理解の確認にならないことが多いです。
2-2. 試験問題の標準的なレベルの問題を解けるようになりたい人
自身の受験予定にしている大学・大学院の試験問題のうち、標準的な問題(試験の合格者がほぼ全員正解してくるような基本問題)を解けるようになりたい人、またそうした問題の類題を使って演習量を確保したい人がこれに該当すると思います。
この目的の人は基本的には2-1で記載した方針と同様、解答解説が丁寧に記述されている問題集を選んだほうがいいです。試験をパスするうえで落とせない類の問題を解くことになるので、解答解説を読み込んで理解を深められるようにする必要があります。
また、個人的な体感ですが、パッと参考書を見た時に5~6割くらいの問題が完答できるものを選ぶとよい演習が積めると思います。前述の内容に照らし合わせて志望校の標準問題を解く実力がないと判断した際には正答率5~6割くらいの問題集を間に挟み続けて実力を段階的に上げた方が良いです。
2-3. 試験問題の中でも発展的なレベルの問題を解けるようになりたい人
得意科目にしたい人、他の受験生が解けなさそうな問題においても完答を狙いに行けるような実力をつけたい人はこの項目に該当すると思います。
このレベルになると利用する参考書も難易度が上がり、選べる参考書の選択肢が減ってきます。特に大学院のような専門的な内容を扱うものは解答解説も簡素になり、やりこむためには時間も労力も加速度的に増えていきます。
参考書を選ぶポイントとしては受験予定の試験が提示する高難易度の問題やその類題が載っているもの、関連トピックにおいて難易度の高い問題を取り扱っているものを選ぶのが良いと思います。
この難易度帯は前述の通り、参考書の解答解説も簡素になっていることが多いので自力で解けないものは先生や自分より優秀な学生や先輩などに積極的に質問するのが良いと思います。
自学自習でどうしても周りに頼れる人がいない場合は時間効率が悪いので最悪放置するのも手です。更なる演習を積んで実力が上がったらまた戻ってきましょう。(問題内容が高難易度なので自身が解けなくても他の人も同様に解けない場合が多く、点数的にビハインドになることがないと想定されるためです。) - 上記の作業を進めていくうえで利用する辞書や資料集のような使い方をするためのもの
教科書載っているトピックの発展的な内容を詳しく知りたい、または教科書やそれに類する参考書にほとんど記述されていないような細かな内容についても理解を深めたい人はこの手の参考書を探す必要があります。
一般的に大学入試において難関大学といわれるような類の大学は上記のようなマニアックなトピックや教科書に記載されているようなトピックに関する深い理解が問われることもそれなりにあります。
赤本や高難易度の問題演習を積む際に教科書とは別に、その科目のすべてが網羅されているような図鑑や辞書のような参考書を1冊用意しておくとよいと思います。この手の参考書は隅々まで通読するというよりは必要に応じて適宜必要な箇所だけを読むという使い方をするのがコスパ的に良いです。
この手の本の見つけ方ですが、利用目的上どうしても内容が詳しくなってしまうので、大きくて分厚い本になりがちです。まずは書店で大きくて分厚い本を中心に目星をつけ、参考書の記載内容が(目次レベルでいいので)網羅的にピックアップされていること、図や表、グラフも用いて丁寧な解説がなされているかどうかを見ていくのがいいです。
余談ですが、大学院においては上記のような本になるほど洋書が多くなります。なので、日本語の参考書で所望の本がない場合はネット上で英語で検索してみるとよいかもしれません。
できるだけ中身を確認して購入判断をしよう!
前項で参考書の目的に応じた選び方を整理してみましたが、いずれの場合も本の中身がある程度見えている、あるいは内容を知っている状態じゃないと選ぶのが難しいと思います。そのため、私としては書店などに足を運んで参考書の内容が自身の利用目的に合致しているのかどうかを確認することを強くお勧めします。
Amazon等の方が安く手に入れられるというのであれば、書店で一度中身を確認してからネットで注文するというやり方もよいと思います。
その本は本当に購入する必要があるのか?
ピンキリですが、参考書も専門性が高くなればなるほど、値段も高くなっていきます。特に大学で利用するような参考書は専門性が高く、一般の本と比べると購入者も少ないので値段が高くなりがちです。
そのため、大学院入試の準備などで参考書を購入する際は本当に買う必要があるのか、図書館で借りたり方が良いかといったことも考えた方が良いと思います。古本を買ったり、使わなくなった本を先輩からもらうという手もあります。
ちなみに私は参考書に書き込みなどをしたいタイプの人間だったので、古本でもいいので可能な限り購入する方針にしていました。一方で、利用頻度が低いものや絶版になっているものは図書館等で借りることもしていました。
参考書を買っただけで満足していませんか?
色々な参考書に目移りしていませんか?参考書を買ってやり始めるとついつい他の参考書にも目を配ってしまうことがよくあると思います。
私の過去の経験上、いざ参考書を使い始めると別の参考書の方が良かったのでは?この参考書だけで十分な演習が積めるのか?志望校の入試問題に太刀打ちできるのか?
…といった疑問がよく湧いてきました。この手の思考を放置すると…できもしないのに多くの参考書を買ってしまい、やらずじまい…なんてことになりかねません。
そうした思考に陥らないために序盤で説明した通り、参考書を購入する目的を明確化しておくことが非常に重要なのです。
また、最終的な目標は試験にパスすることなので、赤本等で入試問題を確認し、最終的に自分が求める実力値をチェックするようにしておくと必要となる参考書の種類や難易度、やりこむ順番が整理できるのでお勧めです(最終的なゴール(身に着ける実力のレベル)早めに確認しておきましょう)。
私の経験上、参考書は量より質が非常に重要だと考えています。たくさんの参考書に手を出すよりも、よく考えて選んだ参考書1冊を徹底的にやりこんでください。やり終えてから次の参考書に手を付ける方が結果的に早く実力が付くと思います。
まとめ
今回は多くの受験生が悩みがちになるであろう、参考書の選び方についてまとめてみました。参考書は上手に選ぶと自身の勉強を助けてくれる非常に強力なツールになる可能性があります。時としてそれは学校の授業を受けなくても問題にならないくらいの成果をもたらすこともあります。
但し、参考書の選び方を間違えたり、中途半端に手を付けると期待したような成果が出ないこともあるので注意が必要です。
ちなみに私は高校3年生の9月まで文系の学生でした。宇宙開発をどうしてもやりたくなったので、理系に転向しましたが、学校のカリキュラム上物理と理系数学(微分積分や極限、行列、極座標など)は授業が受けられなかったので独学でした。
浪人してからは予備校で授業は受けられるようになりましたが、高校3年間である程度勉強してきていることを前提とした授業になっているので、私はついていけず…結局授業もまともに受けないで参考書を使って独学で勉強しきりました。(2浪目のときはそこそこ真面目に授業を受けられるようにはなりました。)
…というわけで、本記事のまとめは物理と数学の一部を独学で切り抜けた私の受験経験に基づくものなので、成績が出なくて困っている方は是非参考にしてみてください。
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