東大院 航空宇宙工学専攻 航空機力学対策

航空宇宙システム学

 こんにちは。宙野です。この記事では東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の院試の専門科目である航空機力学に関する対策をまとめた情報を提供します。

 専門科目の試験の全体概要については「東大 航空宇宙 専門科目について」という記事でまとめているので、そちらも参考にしていただければと思います。

出題の傾向

 2024年時点では直近の過去5年を振り返るとこの分野からの出題はないようです。というのも、昨今は宇宙機関連のトピックが世間でも盛んに騒がれており、軌道力学や制御工学のような分野が良く出題されているからだと考えられます。

 1998年から2018年あたりまでの過去問を見る限りでは主に以下のトピックを中心とした出題が目立っていました。

  • 定常水平飛行
  • 定常上昇飛行
  • 滑空飛行と滑空距離
  • 機体の擾乱運動
  • 誘導抵抗

 いずれも機体の力のつり合いを皮切りに個々の条件設定に基づく考察をさせてきます。

 また、サンプルは少ないですが、宇宙機のリエントリ((大気圏)再突入)に関する問題も出題されたことがあり、単に航空機の勉強だけをしていると対応しづらいトピックが出ることもあります。

難易度は?

 他の専門科目と比較すると難易度は優しめであると言えます。参考書に記載されている式変形や用語説明を丁寧にさらっていけば、多くの問題は自力で解答していけると思われます。

 但し、機体の擾乱運動に関するトピックは座標軸の変換作業や微小量の近似をうまく使って状態空間表現を作っていく必要があり、やり方を知らないと詰んでしまうので注意が必要です。また、計算量も他のトピックと比較して多くなってくるので、航空機力学の中では難易度は高めと考えます。

どんな参考書がお勧め?

 色々な本が出回っているかと思いますが、私が過去問の解答を作成するうえで特に利用した参考書は以下の2冊になります。

 ・航空力学の基礎(第3版) [牧野 光雄] (産業図書)

(出典:Amazon.co.jp)

 いわゆる銀本とか言われているやつですね。航空宇宙工学専攻の学生でこの本を知らない人はいないのではと感じるくらい有名な本だと思います。

 この本は航空機の飛行原理や翼理論等、航空機に係る物理現象や空力特性などを広くカバーしています。航空機力学の解答作成に大いに役立ってくれました。この本に記載されている内容はよく読み込んだほうが良いと思います(内容としても面白いですよ!)。

 次にお勧めする本ですが、「飛行力学」(養賢堂, 前田 弘 著)というものです。

 画像や購入リンクがないのはご容赦ください。この本は現在絶版となっており、入手するにはヤフオクやメルカリなどの中古品を扱っているお店で購入を狙うしかないです。私はたまたまamazonの中古品が出回っているのを見つけて受験生だった頃入手できました。

 なお、関東限定ですが、どうしても購入できない人は東京にある国立国会図書館で本を借りるという手があります。

 国立国会図書館は日本で出版されているすべての本が集約されている図書館なので、他の人が借りてなければ必ず存在します。

 入手難易度は高めかもしれませんが、この本も手に入れてよく読み込むことをお勧めします。この本の素晴らしいところは航空機力学に関する情報だけでなく、宇宙機の軌道遷移や再突入、ロケットの軌道投入に関する情報もまとまっている点で、まさに航空宇宙システム学の対策にはぴったりの本でした。

 もはやこの本から出題しているのでは…?と疑っていたくらいです!

 読者の皆さんが過去問の解答を手に入れているなら正直上記の2冊があれば航空機力学分野はどうとでもなります。解答を自作するのであれば、必要に応じて他の専門書も適宜漁っていく必要があります。

 

対策

 冒頭の出題傾向でも言及した通り、定常飛行、飛行機の擾乱運動に関する出題がほとんどなので、まずはこれらを重点的に対策する必要があります。また、サンプルは少ないですが、宇宙機の飛行特性についても抑えておく必要があるでしょう。

 定常水平飛行をしている際の機体の力のつり合いや推力の最小化、揚力係数の導出をできるようにしておきましょう。

 定常滑空、上昇飛行についても、上記と同様、機体の力のつり合いから滑空距離や滑空角の算出、飛行速度の導出及びそれらを用いた考察を要求してくるので、できるようにしておきましょう。

 擾乱運動ではフゴイドモードに関する理解や、機体の運動方程式から状態空間表現への変換、固有振動数の導出あたりができるようになっているとよいと思います。

 後は類似傾向の対策として機体の旋回性能に関連する式の導出や機体の離陸・着陸距離に対する考え方を抑えておくと対応できる幅が増えると思います。リエントリ問題についても過去に出題実績があるので、一度やっておくとよいでしょう。

その他注意事項

 航空機力学は機体にかかる力のつり合いの式が立てられれば、基本的には多くの問題に対応していけると思います。

 対応力を上げるにはベクトル解析や線形代数を習熟しておいた方が良いでしょう。

 また、問題の中には式の変形方針を知ってないと解答にたどり着くのが難しいものもあるので、参考書をよく読んで、重要な関連式の導出ができるように自分で練習しておきましょう。 (残念ながら本を読んでるだけでは力はつきません…自分で手を動かしましょう!)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

それではまた次回お会いしましょう!

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