こんにちは。宙野です。この記事では東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の院試の専門科目である振動工学に関する対策をまとめた情報を提供します。
専門科目の試験の全体概要については「東大 航空宇宙 専門科目について」という記事でまとめているので、そちらも参考にしていただければと思います。
出題の傾向
東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の振動工学は様々な題材から出題されますが、本質はばね-マス-ダンパ系に係る知識や計算力を問うものが多い印象を受けます。具体的には以下のようなトピックが過去出題されていました。
- ばね-マスの直列接続系に関する振動特性
- ばね-マス-ダンパ系の調和振動
- 剛体棒とばねの上下振動と回転及び微小振動解析
- 宇宙機の推進と振動
- 弦の振動
- 歯車伝導機構の捩り運動
- 翼とばねによる空力特性及び振動特性
- ばね-マス-ダンパ系とクランク機構
- ロケットの飛行原理と振動工学
H11年~H25年あたりまでの出題トピックをざっと挙げてみましたがバライエティに富んでいますね。直近の推進工学を見ても振動工学の分野からはばね-マス-ダンパ系が出ているようです。
剛体棒の解析は固体力学から出題される梁の微小振動に関する計算も出題されています。また、物体の捩り運動に伴う振動解析も何年か出題されているので抑えておく必要があるでしょう。
上記のトピックの中で上がっているロケットや宇宙機の振動については論述問題と併せて出てくるので、振動工学だけでなく、ロケットや宇宙機・飛行機の飛行特性、振動発生の要因については参考書を読んで整理しておくとよいと思います。
過去問を見ていくと多くの場合、問題の構造として、序盤で提示された系に対する運動方程式を立式させられます。その後、固有振動数の導出や、微小振動に関する偏微分方程式を解かせるもの、物体の変位量を問う問題が良く出題されるように見受けられます。
難易度は?
一見するとよくわからない系が題材となることが多いものの、その本質はばね-マス-ダンパ系であり、基本的な振動解析ができるかどうかを問う問題が多いので、難易度としてはそこまで高くないと考えます。 (とはいえ、近年は昔に比べて徐々に難関傾向にあると感じてはいます…)
但し、一部の馴染みのない論述問題や題材がトピックになることもあるので、専門科目の対策として最初に手を出すと難易度が高いように感じるかもしれません。
どんな参考書がお勧め?
まずは振動工学に関する基本的な考え方と、運動方程式の行列表示、固有振動数の算出ができるようになる必要があります。私は大学時代の振動工学の授業で以下の参考書を使っていたので、院試でも使い続けていました。
・機械振動工学(機械工学エッセンス2)[石井 章男/井上 剛志] (培風館)
(出典:Amazon.co.jp)
この本は振動工学の内容として良くまとまっているとともに、式の展開も丁寧なので、過去問の解答が手元にあるなら上記1冊あるだけで大分対策が楽になります。
解答を自作する必要がある人は上記の本を1冊やりこんだら、演習量を積むという観点で他の参考書をやるとよいかもしれません。
対策
お勧め参考書欄でも記載しましたが、まずは振動工学の基礎固めと、系の運動方程式の立式練習をしましょう。正直ここの立式で失敗すると以降の解答が全滅するので、運動方程式の立式練習には十分時間を割いた方が良いです。ばね-マス-ダンパ系の他にも円盤や歯車の捩り運動や弦の振動についてもフォローが必要です。
また、弦の振動は偏微分方程式を解かせる問題も出るので、解法のおさらいが必要です。更に剛体棒や弦に関する微小振動解析をさせてくる問題もあるので固体力学分野の微小振動に関する勉強を先にしておくと対応できる幅が出てきそうです。
論述対策ですが、この手の問題は航空機や宇宙機の推進の仕組みについて(実際にどのようにして理論が適用されているのかという観点で)調べるとともに、航空宇宙工学分野のニュースについて意識しておくとよいと思います。解答を自作するにしてもトピックがわからないと調べようもないので。
推進工学ということもあり、ロケットや宇宙機の飛行に伴う振動を題材にしているものが見受けられるので、ネットや参考書で飛行特性を調べておくとよいでしょう。
その他注意事項
振動工学が題材となっているとはいえ、他の専門科目と融合しているものもそれなりに出ている印象があるので、数学も含めて先に以下の分野を勉強しておくと、振動工学関連の問題が対策しやすくなると思います。
- 線形代数
- 偏微分方程式
- 固体力学
- 材料力学
- 非圧縮性流体力学
改めてみると多いですね 笑
まぁ、正直推進工学は総合問題になっていることが多いので、他の分野をある程度固めてからやるのがいいかもですね。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回お会いしましょう!
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