東大院 一般教育科目(数学)について

数学

 こんにちは。宙野です。この記事では東大の工学研究科が実施する大学院入学試験の一般教育科目の数学についての情報をお届けします。

 なお、最新の受験情報は大学院が展開する入試要項も併せてご確認するようお願いいたします。

専門基礎科目の特徴

 東京大学大学院 工学研究科としては数学、物理学、化学が入試科目として用意されており、どの科目を受験する必要があるのかは各専攻ごとに異なっています。航空宇宙工学専攻としては数学のみが課されます。元々航空宇宙工学専攻は数学と物理学が課されていましたが、2015年から物理学が対象科目から外れました。

 一般教育科目の数学は大問6題で構成されており、受験生はここから任意の3題を選んで回答します。年度によってばらつきはあるものの、難易度の高い問題が含まれていることもそれなりにあるので、まんべんなく各分野の対策をしておく必要があります。なお、試験時間は150分です。

攻略の基本方針

 基本的には東大の過去問を中心とした演習をするのが良いと思います。いきなり問題を解いて解答を作成しきる自信がない、あるいは解答を持っているが中身を見ても理解に時間がかかる…というような状態であれば参考書で基礎固めをするとよいと思います。

 私は能力が低かったので、参考書で基礎事項を固めた後、参考書で間違えた問題の解きなおしと東大の過去問の作成に時間を割いてました。後は名大と東工大を受験予定だったので、演習量確保の観点からそれらの過去問もやっていました。

 基本的には専門科目よりも手が付けやすく、解答も比較的出回っているであろう一般教育科目から攻略していくのが良いかなと考えています。

 どのみち専門科目の解答を作成するうえで、数学的な処理は少なからず必要となってきます。なので、先に数学を完成させておいたほうが専門科目の対策がしやすくなると思います。

専門基礎科目(数学)の内容

 以下、数学の大まかな出題範囲を記載していきたいと思います。

大問科目内容備考
第一問微分方程式有名な解法のものが
よく出題される
偏微分方程式を含む
積分計算求値問題がほとんど面積分と体積積分は第四問で出題
第二問線形代数固有値に関する問題
写像
写像関連は
難易度高め
第三問複素関数論留数定理関連
写像関連
第四問ベクトル解析ベクトル方程式、
面積分、体積積分
第五問ラプラス変換ラプラス変換関連
フーリエ変換フーリエ変換関連
第六問確率、統計確率・統計問題筆者は勉強してない

 上記の表を基に、以下個別に詳細事項をまとめたいと思います。

  1. 第一問:微分方程式
     微分方程式は常微分と偏微分方程式の分野から出題されます。出題比率的には常微分方程式のほうが多い印象です。常微分方程式のほとんどはリカッチの微分方程式など、有名な解法として知られている典型的なものが出題されることがほとんどです。

    対策:
     常微分方程式は有名どころの微分方程式の形と解法を整理して、一目見ただけで即座に対応できるよう演習を積んでおく必要があります。(逆に解法を知らないと詰むので他の受験生に差をつけられてしまいます。)

     偏微分方程式ですが、少なくとも過去問を見ている限りではそこまで難易度の高い問題はあまり見たことがなかったので、基本的な解法を抑えて使えるようにしておけば大丈夫だと思います。(たまに偏微分を敬遠する人がいますが専門科目で詰むので対応は必須と考えます。)
  2. 第一問:積分計算
     積分計算は求値問題が大半です。部分積分や置換積分など、基本的な積分方法を抑えて計算練習をする必要があります。logやsinなどの関数を含む計算の公式がいくつかあるので、それを覚えておけば専門科目の勉強の中である程度は演習量を確保できると思います。
  3. 第二問:線形代数
     線形代数からは主に固有値関連の問題と写像関連の問題が出題されます。出題比率的には固有値関連の問題が圧倒的に多いです。一方で写像関連の問題は出題頻度は高くないものの、難易度の高い問題が多い印象です。(単に私が苦手なだけかもなのですが…)

    対策:
     固有値関連の問題は3×3や4×4の行列で固有値を算出する練習をしておくとよいと思います。この分野は計算量がそれなりに多く、ミスも出やすいので普段から計算ミスを防ぐ工夫をして練習する癖をつける必要があります。

     写像については自身の専門性次第ですが、やり慣れてないなら最低限の考え方と計算方法だけ抑えて、試験本番は解けなさそうなら他の問題に逃げるという手もありかと思います。
  4. 第三問:複素関数論
     いろいろなバリエーションの問題が出ますが、留数定理に帰結するタイプの問題が多いように見受けられます。筆者は苦手意識を持っていたため、なかなか手を付けづらいイメージがありました。解答作成も一番苦労した分野です。また、写像関連の出題は私自身あまりなじみのないのないものかつ難易度の高いものが多かったように感じたので、特に対策に苦労しました。

    対策:
     特に留数定理に対する理解を深めて、過去問に限らず色々なタイプの問題を解いておくと対応力をあげられると思います。他大学の院試問題に手を付けるもの有効かと思います。
     写像関連については対策も勉強もしていましたが、私の場合はよほど問題の難易度が低くない限りは捨てる気でいました。
  5. 第四問:ベクトル解析、面積分、体積積分
     第四問では線積分、面積分、体積積分、ベクトル方程式の計算が出題されます。また、年度によりますが、線形代数など他の分野との融合も見受けられるので、他の分野の対策をある程度やってから手を付けるとよいかもしれません。

    対策:
     過去問をベースに演習を積んでいくのが効率的だと感じました。また、この問題タイプは図示問題もそこそこ出てきます。受験勉強をする際には空間図形や平面図形、グラフの描画についても意識しておくとよいでしょう。
  6. 第五問:ラプラス変換
     第五問はラプラス変換とフーリエ変換から出題されます。出題比率的にはフーリエ変換のほうが出題頻度としては高い印象です。ラプラス変換はそこまで高い難易度の問題は出題されないように見えるので、出題されたら必ず完答できるようにするつもりで演習を積んだほうがいいです。

    対策:
     ラプラス変換に関する問題は特に難しくないので、参考書で基本事項だけさらったら過去問の演習をひたすら積むだけでいい気はしています。基本的に定義式は与えられるので、それを使った文字計算は一通りできるようにしておくとよいでしょう。
  7. 第五問:フーリエ変換
     フーリエ変換は6項で言及した通り、ラプラス変換と比較すると出題頻度が高いです。そこそこ計算量が求められるものもあるので、計算方法も含めて習熟しておく必要があります。

    対策:
     フーリエ変換は振動工学でも使ったりするので、基礎事項を抑えたら数学の過去問をやりつつ、専門科目の勉強を進めて演習を積むのがいいと考えております。また、ラプラス変換と同様、定義式は与えられるので、定義に基づいた数値計算、文字計算が一通りできるようにしておきましょう。
  8. 第六問:確率、統計
     …申し訳ないです。この分野についてですが、筆者は学部生の頃、統計学をとっていなかったこと、数学の授業でも扱わなかった範囲ということもあり、受験生の頃は対策を放棄していました。本項の傾向と対策についてはご自身で調べていただけると助かります。

     必然的に第六問が選べなくなるので、私は自分の首を絞めることになっていました。とはいえ、時間も有限なのでご自身のスケジュールや専門性を考慮して方針を練るのが良いと思います。

 上記1~8項で各出題分野の解説をしてきました。特に微分方程式、線形代数、複素関数論の3つは東大に限らずどこの大学院でも出題されることが多いかと思います。

 なので、現時点で東大の数学を解くのが難しいと判断した場合には他大学の院試でまずは演習を積むのも手だと思います。(少なくとも自身の所属する大学院の過去問と解答はあるはずなので、まずはそれで演習量を確保しましょう。)

試験対策の優先度

 これまでの項目で東大の工学研究科が提示する数学の院試の問題について解説してきました。では、数学の中でもどの分野から対策をしていくのが良いかについて、筆者の考えをここでは提供していきたいと思います。

 結論としては、自身が最も得意とする分野から演習を積み、準備を終わらせるのがいいと思います。これは受験生の専攻分野や履修科目にもよるので、どの分野がいいかは一概には言えません。

 ただ、私の例を出すのであれば、線形代数を最優先で練習しつつ、ラプラス変換・フーリエ変換、積分計算・微分方程式、ベクトル解析、複素関数の順番で準備を進めていました。

 線形代数を優先して対策したのは、大学院での希望研究分野が制御工学だったので、線形代数の習熟が必須だったこと、専門科目の制御工学を得点源にしたかったためです。あとは自分の得意な分野から演習を積んで完成を目指したという感じです。

今回の記事はいかがでしょうか?読んでいただいてありがとうございます。

ではまた次の記事でお会いしましょう!

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