東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 院試対策ガイド

 東京大学大学院の航空宇宙工学専攻を受験したいと思っても、「何から勉強すればよいのか」「どの科目を選べばよいのか」と迷う方は多いのではないでしょうか。

 航空宇宙工学専攻の院試では、数学から航空宇宙分野の専門知識まで幅広い能力が求められます。そのため、やみくもに勉強するのではなく、まず試験の全体像を理解してから学習計画を立てることが重要です。

 本記事では、初めて院試対策を始める方に向けて、

  1. 何を勉強するのか
  2. どの科目を選ぶのか
  3. 過去問をどう使うのか

という3つのポイントを解説します。

 なお、試験科目や試験方式は年度によって変更される可能性があります。本記事では2025年の試験を一例として紹介していますので、実際に受験する際は、必ず東京大学大学院工学系研究科が公開する最新の募集要項を確認してください。

何を勉強すればいいのか?

 航空宇宙工学専攻の入試対策は、大きく「外国語(英語)」「一般教育科目(数学)」「専門科目」の3つに分けて考えると分かりやすいです。

表. 試験科目分類

分類主な内容
外国語TOEFL iBT
一般教育科目数学
専門科目固体力学、流体力学、航空宇宙システム学、推進工学

英語 ― TOEFLは早めの準備を

 英語については、TOEFL iBTのスコアを所定の期限までに提出する必要があります。

 TOEFL iBTでは「Reading(読む)」「Listening(聞く)」「Speaking(話す)」「Writing(書く)」の4技能が評価されます。大学受験の英語とは異なり、話す能力や英語で文章をまとめる能力も必要になるため、短期間の対策だけでスコアを大きく伸ばすのは簡単ではありません。

 英語力は短期間では身につきにくいため、可能な限り早い段階から4技能をバランスよく勉強しておくことをお勧めします。特に大学2~3年生の段階から準備を始めておけば、専門科目の勉強が本格化する時期とTOEFL対策が重なることを避けやすくなります。

 また、TOEFLの試験会場は予約制です。アクセスの良い会場や希望する日程は早く埋まる場合があるため、院試直前になって慌てて予約手続きをするのではなく、余裕を持って受験日を確保しておきましょう。

数学 ― 専門科目を解くための土台

 数学では、主に次の分野から出題されます。

表. 出題分野一覧

分類主な内容
第1問微分方程式(常微分・偏微分)
第2問線形代数
第3問複素関数論
第4問ベクトル解析
第5問フーリエ変換・ラプラス変換
第6問確率・統計

 年度によって大問番号と出題分野にずれが生じることはありますが、概ね上表のような構成で出題されます。

 大問は6題が用意され、その中から3題を選択して解答する形式です。なお、第5問については、年度によってラプラス変換とフーリエ変換のどちらが出題されるかが異なります。

 「6題中3題なら、最初から3分野だけ勉強すればよい」と考えるのはお勧めしません。年度によって各分野の問題の難易度にばらつきがあるためです。できるだけ多くの分野を勉強しておけば、本番で問題を見てから解きやすい3題を選択できます。

 また、微分方程式や線形代数、ベクトル解析などは、専門科目を理解するうえでも重要な基礎となります。そのため、専門科目の勉強に本格的に取り組む前に、数学をある程度使いこなせる状態にしておくと、その後の学習を進めやすくなります。

 数学の各分野については、本サイトの数学関連記事でも個別に解説しています。

専門科目 ― 4分野を理解しよう

 専門科目は、大きく次の4分野に分類できます。

表. 出題分野一覧

分野主な内容
固体力学材料力学・弾性力学・塑性力学
流体力学圧縮性流体力学・非圧縮性流体力学・粘性流体力学
航空宇宙システム学軌道力学・制御工学・航空機力学
推進工学振動工学・熱力学・伝熱工学・圧縮性流体力学・電磁気学など

 以前は午前と午後に3時間ずつ試験が行われ、それぞれ4題中3題を解答する形式でしたが、近年の試験では半日で実施される形式となっており、過去と比べて日程が短縮されています。

 専門科目では単純に公式を覚えるだけでなく、「なぜその式を使えるのか」を理解することが重要です。特に推進工学では熱力学や伝熱工学、圧縮性流体力学など、複数の分野の知識を組み合わせて考える問題もあるため、個々の公式を暗記するだけでなく、基礎事項を関連付けて理解しておくことが重要です。

どの科目を選べばいいのか?

 基本的には、受験勉強を始めた段階で科目を絞り込みすぎず、できる限り幅広い分野に対応できるよう準備することをお勧めします。

 院試では、同じ分野でも年度によって難易度にばらつきがあります。得意科目だけに絞って勉強すると、本番でその分野に難しい問題が出題された場合、他の問題へ切り替えることが難しくなります。

 反対に、複数の分野を勉強しておけば、試験問題を見てから自分が解きやすい問題を選択できます。選択できる問題の数を増やしておくこと自体が、本番でのリスクを下げることにつながります。

 一方、学部の授業や研究が忙しく、すべてを十分に勉強する時間がない場合もあるでしょう。その場合には過去問を確認したうえで、得意・不得意や残された勉強時間を考慮し、優先順位をつける必要があります。(ちなみにですが、私の場合、確率・統計分野は授業で取れていなかったので、この分野は対策せず、浮いた時間を他の分野の演習に再配分しました。)

 ただし、完全に捨てる科目を増やすほど、本番で問題を選択できる余地が小さくなります。苦手科目を勉強対象から外す場合には、その分だけ本番での選択肢が減り、想定外の難問に対応できないリスクが高くなることを理解しておきましょう。

過去問をどう使えばいいのか?

 過去問は、院試対策において非常に重要です。しかし、最初から本番と同じ条件で解く必要はありません。

 まずは「解く」ことよりも「読む」ことから始めましょう。

 問題を読み、「どのような分野から出題されているのか」「大学の授業と比べてどの程度の難易度なのか」「どのような知識や計算能力が要求されているのか」を確認します。直近の年度を特に重視しながら、可能であれば10年分程度に目を通し、出題傾向の変化も確認しておくことをお勧めします。

 そのうえで、出題頻度や自分の得意・不得意を考え、各科目の学習優先順位を決めます。

過去問演習の基本的な流れ

過去問を読む

出題傾向と難易度を把握する

学習する科目の優先順位を決める

まずは時間を測らず自力で解いてみる

解けなければ教科書・参考書で基礎を復習する

もう一度、何も見ずに解く

必要に応じて別解も考える

入試直前は時間を測って本番形式で演習する

 最初の段階で問題が解けなくても、必要以上に焦る必要はありません。解けない原因が「問題に慣れていないだけ」なのか、「そもそも基礎知識が不足している」のかを確認することが大切です。

 基礎事項が抜けている場合は、市販の参考書や大学で使用した教科書に戻り、その分野を復習してから再度挑戦しましょう。

 そして特に重要なのは、解答を読んで理解しただけで終わらせないことです。

 一度解いた問題でも、解答を閉じてもう一度計算し、最後まで自力で正解できるか確認してください。「解答を見れば分かる」という状態と、「何も見ずに答案を作成できる」という状態には大きな差があります。

 さらに、余裕があれば別解も検討してみましょう。同じ問題を複数の方法で考えることで、本番で見慣れない条件が与えられた場合にも、別の方向から問題を解く力を養うことができます。

 また、専門科目の過去問に本格的に取り組む前に、数学を十分に勉強しておくことを強くお勧めします。

 微分方程式、ベクトル、行列などの数学は、流体力学や制御工学、軌道力学をはじめとする専門科目を解くための「道具」です。専門分野の物理的な意味を理解していても、必要な数学を扱えなければ式を立てたり計算を進めたりすることができません。

 そして入試が近づいてきたら、実際の試験時間を意識して過去問を解きましょう。本番と近い環境で「どの問題を選ぶか」「1問に何分使うか」まで練習しておくことで、本番での時間配分にも慣れることができます。

まとめ ― まずは過去問を見て全体像を知ろう

 初めて院試対策をする場合、いきなり参考書を最初から最後まで勉強する必要はありません。

 まず過去問に目を通して「最終的にどのレベルまで到達する必要があるのか」を把握し、そこから逆算して学習計画を立てることが重要です。(頻出事項を中心に勉強を進めていくのが良いでしょう。)

 そのうえで、数学の基礎固めとTOEFL対策を早めに始め、徐々に専門科目の学習と本格的な過去問演習へ進みましょう。

過去問で試験を知る → TOEFL対策を早めに始める → 数学の基礎を固める → 専門科目を勉強する → 過去問を繰り返す → 本番形式で仕上げる

 特にTOEFLは短期間での対策が難しく、数学は専門科目を学ぶための基礎になります。この2つを早めに進めておくことで、その後の専門科目や過去問演習に時間を使いやすくなります。

 大学2~3年生であれば、まだ十分に準備する時間があります。まずは過去問を一度開いて、現在の自分と院試で要求されるレベルとの差を確認するところから始めてみてください。

表. 受験科目対策一覧

科目リンク
外国語(英語)準備中
一般教育科目数学数学の対策を見る
専門科目固体力学固体力学の対策を見る
流体力学流体力学の対策を見る
航空宇宙システム学航空宇宙システム学の対策を見る
推進工学推進工学の対策を見る

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