東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成17年の流体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
流体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679623a79b4c1904ae5e62aa>
総評
今回の問題はピトー管と風洞実験設備が題材に選ばれました。この流体力学の分野では今回のように実験装置や流体力学の特性を利用した器具がしばしば題材として取り上げられます。
そのため、市販の参考書に記載されているような流体力学の特性に関する理解だけでなく、試験装置の使い方や特徴なども理解しておく必要があります。
このような問題は大学時代に学生実験で器材を触ったことがあるなら、当時の実験レポートや設備の使い方の説明書などを復習の題材として利用するとよいでしょう。
そうした経験がない方についてはネット検索や過去問を通して理解を深めるという手が最短ルートになると思います。
本問では上記に述べたような機材を通してベルヌーイの式やポテンシャル流に関する理解を確認しているように見受けられます。
いずれも流体力学を学ぶ上では基礎中の基礎に当たる項目なので、対策していない人はいないと思います。但し、実験機材と絡めた問題になっているので、純粋に問題演習をやってきただけの人だと苦戦すると思われます。
難易度★★★☆☆
風洞実験設備やピトー管を題材にしているとはいえ、最低限の説明は問題文で与えてくれているので、そうした機材を使ったことや見たことがない人でも解けるようにはなっていると思います。
また、問題自体もどこかの参考書に載っているようなよくある考え方を適用していけるので、そこまで難易度は高くないと思われます。
よって、本問の難易度は標準的な★3つとしました。
解答の指針
第1問
1.
ピトー管の原理に関する説明です。ベルヌーイの式を用いて説明をしましょう。
ピトー管は主に流体の速度を測定したい時に使われます。なので、航空機やF1のようなレースカーなどに取り付けられていることがあり、これで座席から機体の速度を確認するという仕組みになっています。
2.
これは1の原理を利用して実際に数値計算をさせるという問題ですね。実際に数値計算をさせることで受験生にピトー管の原理に対する理解を深めさせようと出題者は考えているのではないかなと想像しています。
実際に数値計算を進めてみると、理解が深まることは確かなので、本問に限らず色々状況を自分で設定して計算してみてほしいです。
また、レイノルズ数の計算も求められているので、これを機に復習しておきましょう。流体力学は他にもいくつか無次元量の定義が出てきますが、レイノルズ数が圧倒的によく出るので、まずはこのレイノルズ数をしっかり理解しましょう。
第2問
1.
第1問を基に風洞実験をするという設定です。今、問題文では上下対称の翼が迎角0度で風洞試験設備内に配置されており、かつポテンシャル流を想定するという条件指定がされています。
この時の流れの特性に注目して実際の流体の流れと比較して説明するとよいでしょう。
一応、本問は別解も用意しているので、気になった方は確認してみてください。
2.
ご丁寧に連続の式と運動方程式が与えられています。ゆとり教育を彷彿させる懇切丁寧なヒントですが、このヒントがなくても問題が解けるように演習を積んでおいた方が良いです。
上記の2つの式に加え、渦無し流れを仮定せよというこれまた大きなヒントが与えられているのでこれらを基にポテンシャルに関する条件を整理していきましょう。
後はその結果を運動方程式へ代入して計算を進めれば題意の式は導出できます。
3.
計算自体は問題文の指示通り、圧力係数の定義に従って計算すれば答えは出ます。
問題自体は大した難易度ではないのですが、この問題も実験装置を理解するうえでは重要です!
静圧孔は問題文に記載されている通り、翼の上面についています。翼周りの流れに対して直角に穴(静圧孔)をあけ、穴の先端に圧力計を接続することで、揚力の評価を実施します。
大抵は静圧孔にテフロンチューブやビニールチューブを取り付け、その先端にマノメータ等を接続する形で実験系を作ります。
4.
実験データを基にした考察問題です。この手の問題も学生実験で経験があると解きやすいですが、経験がなくても十分回答はできます。恐れずチャレンジしてみてください。
今、問題文ではポテンシャル流による理論曲線と実験データの比較をしています。グラフを見ると翼の後端部分で実験データと理論曲線に違いが出ているのがわかります。
ポテンシャル理論の特性を振り返って、この翼の後端付近で理論通りにデータが取得できない理由を考えてみてください。
5.
円柱と翼の流れの違いについて考察し、その結果をまとめましょう。ポイントは後縁部の形状の違いですかね。あとはこの実験をするための条件について着目しましょう。
そういう意味では6.の問題文がヒントになっており、レイノルズ数に着目すればよさそうだと推測できると思います。これらの点を中心に考察結果を記載するとよいと思います。
6.
これも興味深い問題です。議論のポイントは5と同じ供試体を用いるものの、レイノルズ数が違います。このレイノルズ数の違いを基に考察をするとよいでしょう。
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