東大大学院 航空宇宙工学専攻|平成28年 流体力学(午前)の出題分析・院試対策

流体力学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成28年の流体力学(午前)について、出題内容、難易度、必要となる知識、過去問演習で押さえておきたいポイントを解説します。

平成28年午前の流体力学出題概要

分野: 圧縮性流体力学
主なテーマ: 等エントロピー流れ、超音速風洞、シュリーレン法、衝撃波
難易度: ★★☆☆☆

 圧縮性流体力学の基礎に加えて、超音速風洞や流れの可視化など、実験・計測に関する知識も問われていることが平成28年午前の特徴です。

出題傾向と特徴

 今回の問題の特徴は、超音速風洞という実際の実験装置を題材として、理論と実験の両方を問う構成になっていることですね。

 これまで遷音速風洞に関する特性等が出題されていた一方で、過去15年程さかのぼっても超音速風洞やシュリーレン法に関するトピックは取り上げられていませんでした。 

 これらの試験装置や測定手法は圧縮性流体力学分野では超有名なものなので、筆者目線からするとようやく出題された…という感じでした。

 一方、実験装置や実験データを題材とした問題は過去にも出題されているため、「実験を題材として考察させる」という大枠では、従来の出題傾向から大きく外れた問題ではないと考えています。

 また、本問の特徴の1つとして、第4問で穴埋め問題が出ていますが、全問(ほぼ)語句問題なので他の穴埋め問題と比べるとかなり楽に対処できます。

この年度で押さえておきたい知識

 この問題を通して押さえておきたい知識をまとめていきたいと思います。

等エントロピー流れ

 圧力・密度・温度・マッハ数などの関係を正しく式で表せるかどうかを確認する必要があります。

超音速風洞

 超音速流れを発生させる基本的な風洞の仕組みや、各部の役割についてまずは概要レベルで理解しましょう。

 また、物体を支える支柱の影響は装置内の反射衝撃波による影響をデータ評価する際には考慮する必要があることも理解しておくとよいでしょう。

シュリーレン法

 密度変化に伴う屈折率の変化を利用して流れを可視化するという基本原理、衝撃波の観察に適している理由を説明できる状態まで学習しておきましょう。

衝撃波

 衝撃波前後で状態量がどのように変化するのか、どの保存則・関係式が重要なのかに着目しましょう。また、今回は特に斜め衝撃波が題材となっているので、垂直衝撃波との違いに注目して理解を深められるとgoodです。

各設問から何を学ぶべきか

 各小問ごとに学習上のポイントをまとめました。

設問学習上のチェックポイント
第1問等エントロピー変化の基本的な式関係を理解しているか
第2問圧縮性流れにおける物理量の関係を整理できるか
第3問超音速風洞の仕組み・役割を理解しているか
第4問シュリーレン法の原理を理解しているか
第5問斜め衝撃波前後の状態量について理解しているか
第6問実験装置に作用する空気力を物理的に考察できるか

超音速風洞・シュリーレン法をどこまで対策すべきか?

 今回題材の中心となった超音速風洞及びシュリーレン法について、今後の出題予想を踏まえて学習のポイントをここではまとめます。

 冒頭でも少し述べた通り、これらの題材は過去の傾向から見ると出題頻度は少ないですが、実験手法や装置を用いた考察、装置の仕組みを問う問題はたびたび出題されてきています。

 そういう意味では今後も超音速風洞やシュリーレン法に関する出題は十分にあり得ると考えたうえで対策をとる必要があるでしょう。

 下記のポイントを中心に勉強を進めることをお勧めします。

<シュリーレン法>

  • シュリーレン法とは何か?(この方法を使うことによるメリットとデメリットは何か?)
  • シュリーレン法以外に代替となる解析手段はあるか?

<超音速風洞>

  • 超音速風洞とはどのような試験装置なのか?
  • 試験装置を使うことによる制約事項はあるのか?
  • 実機試験によるデータ取得とどのような点で違いが生じるのか?
  • 代替となる計測・解析手法はあるのか?

 問題の出され方は違っても、大学院から提示されているメッセージは一貫して同じです。

あなたは大学院で研究を始める準備ができていますか?

 これに尽きます。

 受験的なことを考えるなら超音速風洞・シュリーレン法だけを重点的に勉強する必要性は高くないとは思います。ただ、最低限は代表的な実験装置・計測方法について基本原理を説明できる程度には理解しておく必要があるでしょう。

 では、どの程度まで理解しておけばよいのでしょうか。学習の到達度を判断する一つの目安として、大学院進学後に自分がその装置や手法を利用する場面を想像してみましょう。

 あなたは晴れて受験に合格し、春からは東大の航空宇宙工学専攻の学生として研究に臨みます。配属先は圧縮性流体力学の専門で研究テーマもこれに該当するものになる見込みです。

 間違いなくこの試験装置や解析手法は研究を進める選択肢の1つに入ってくると思います。…その時に研究を進めていくだけの十分な知識を有していますか?

 自分の理解度を自分で確かめるための判断として、参考になれば幸いです。

他年度の過去問との関連

 今回出題された問題と関連する過去問をpick upすると下記のようになります。

  • 等エントロピー流れ

→等エントロピー流れの中での各種状態パラメータの関係性を式変形の計算をしながら学べます。

  1. H16年 流体力学(午前)
  2. H16年 推進工学(午後)
  • 斜め衝撃波に関する問題

→斜め衝撃波そのものに主眼を置いた問題構成となっているので、式変形や衝撃波の角度考察練習が積めます。

  1. H21年 流体力学(午後)
  2. H23年 流体力学(午前)
  3. H25年 流体力学(午後)
  • 実験装置・データ取得や計測に関する問題

流体力学の実験でよく使われるピトー管を題材にした問題です。風洞実験に対する理解が深まります。

  1. H17年 流体力学(午前)

本問題で苦戦した場合の復習ポイント

 本問を解いた際に完答できなかった場合は下記を参考に復習を進めてみるとよいかもしれません。

計算問題で苦戦した場合(文字計算を含む)

 等エントロピー流れや斜め衝撃波に関する基礎理論が欠落している可能性があるので、まずはそちらを参考書等で見直しましょう。

 その際、自分の手で式の導出や式変形もしましょう。

超音速風洞・シュリーレン法で苦戦した場合

 実験装置の仕組みやデータの計測方法に関する知識が不足している可能性があります。実機試験に関する記述が載っている参考書を読んだり、実際に試験装置を使ったりしている動画なども勉強する際には有効なツールになります。

考察問題で苦戦した場合

 式変形はできるけど、考察・論述問題ができなかった方がこれに該当します。

 大切なのは式変形や実験結果によって得られた事実は何か?その事実から問題で問われている内容を解答するための論理展開がどうなっているのか?

 という点に注意して解答を読み込んでみてください。考察問題の解答はあくまで参考なので、解答例を基に自分の言葉で説明し直してみるとよいでしょう。

 また、記述も勉強するうえでは確かに有効ですが、友人や家族などに説明するというやり方も有効です。

 本格的に研究を始めればわかりますが、学会発表や教授とのディスカッションでもかなり役立ちます。是非口頭練習も取り入れてみてください。

詳細な解答解説について

 本記事では、平成28年午前の流体力学について、出題傾向や他年度との関連、院試対策として押さえておきたいポイントを中心に解説しました。

 各設問の詳細な解答、数式の展開、計算過程については、流体力学の過去問解答解説教材に収録しています。

[平成28年午前の流体力学を収録した流体力学の解答解説を見る]

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