東大大学院 航空宇宙工学専攻|平成24年 流体力学(午前)の出題分析・院試対策

流体力学

 東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成24年の流体力学(午前)について、出題内容、難易度、必要となる知識、過去問演習で押さえておきたいポイントを解説します。

平成24年午前の流体力学出題概要

分野: 圧縮性流体力学
主なテーマ: 衝撃波の特性、圧力係数、薄翼、対称楔物体
難易度: ★★★★☆

 平成24年の流体力学(午前)は、衝撃波に関する穴埋め問題から始まり、圧力係数、薄翼や楔形物体まわりの超音速流れまで、圧縮性流体力学の複数のテーマを横断して出題されています。

 一つのテーマを深く扱うというより、圧縮性流体力学について幅広い理解が求められる点が、この年度の特徴です。

この年度で押さえておきたい知識

衝撃波前後の物理量

 垂直衝撃波と斜め衝撃波の違いを整理しておく必要があるでしょう。また、衝撃波の前後でどのような物理量がどのように変わるのかを数式展開をしながら説明できるようになる必要があります。

 教科書や参考書を読む、数式展開をするだけでなく、描画は事象の理解をするうえでの有効なツールになるので、積極的に自分でも図を描いておくようにするとよいでしょう。

圧力係数

 圧力係数の定義と、圧縮性流体力学分野でどのように利用されるパラメータなのかを理解しておきましょう。

 また、比熱比γとマッハ数で表現するような式変形が良く問われるので、練習をしておきましょう。

微小変動方程式

 与えられた方程式の各項がどのような物理量を表しているのかを確認し、条件に応じてどの項を無視できるのか考察できるようにしておきましょう。式を覚えるというよりも、各項の特徴を考察しながら近似条件を割り出す練習をしておくことが重要です。

楔形物体周りの超音速流れ

 楔形物体に限らず、対称翼、平板翼等、典型的な物体を圧縮性気体流れに置いた際の衝撃波の発生位置、方向は描画できるようにしておきましょう。

 このような衝撃波の発生位置や方向に関する情報は参考書の他にyoutubeなどの実験動画の視聴も参考になるので色々調べてみてほしいと思います。

各設問から何を学ぶべきか

各小問ごとに学習上のポイントをまとめました。

設問学習上のチェックポイント
第1問衝撃波に関する知識を、文章・式の両面から理解できているか
第2問与えられた圧力係数の関係式を条件に応じて扱えるか
第3問微小変動方程式を整理し、物理的な条件を考察できるか
第4問与えられた条件から必要な関係を立式・計算できるか
第5問楔形物体まわりの超音速流れを定性的に理解できているか

なぜ平成24年の流体力学(午前)は難しいのか?

 今回の問題は例年と比べると難易度が高かったように思えるので、少し考察を入れておこうと思います。

扱うテーマの幅が広い

 まず、試験時間3時間で大問4題中3題選択であることを考えると、1題あたり1時間以内で解答することが理想となります。より正確に言えば見直しの時間を考慮する必要があるので、純粋に解答作成に割ける時間は50分程度と考えておいた方が良いでしょう。

 そうした状況を踏まえると、50分で解答作成をする必要がある割には、出題されているテーマが多く、各小問ごとに一筋縄では解けそうにない問題がそれぞれ設定されています。

 そうした状況を踏まえると、試験時間の割には解答しなければならない量が多いように感じます。

穴埋めでも計算・考察が必要

 また、序盤で設定されている穴埋め問題がそこそこ厄介でした。単純な語句埋め問題はあるにはあるものの、計算を要する穴埋めについてはそこそこの計算を求められるうえに出題者の意図に沿った式展開をしていかないといけないので…難易度は高いと言えるでしょう。

「解けない問題を見極める力」も問われる

 試験は合計得点で合否が決まります。残り時間で解答しきれないようなら、簡単に解けるものだけを拾って次の問題に手を付けていく、あるいは解ける問題を確実にとるために残り時間を見直しに費やすというのも1つの戦略です。

 試験本番でいきなり上記のようなタイムマネジメントはできないので、日ごろの過去問演習を通して残り時間と解答方針を見極め・判断する必要があるでしょう。

他年度の過去問との関連

 平成20年午前でも、微小擾乱方程式や圧力係数など、平成24年午前(今回取り上げた問題)と関連するテーマが扱われています。平成24年第3問以降の考察で苦戦した場合は、平成20年午前にも取り組んでみるとよいでしょう。

 両年度を続けて解くことで、式展開の練習をするだけではなく、与えられた条件から流れの状態を考察する練習になります。

→H20年 流体力学(午前)へ

本問題で苦戦した場合の復習ポイント

穴埋め問題で苦戦した場合

 衝撃波に関する特性の理解も必要ですが、穴埋め問題は文章中の誘導にうまく乗れるかどうかがカギになります。

 文章全体を通して問題作成者が何を問おうとしているのかを考えてください。また、問題文と解答を比較して、どのような思考過程でどこまで計算をしないといけないのかを見比べるとよいでしょう。

 東大の穴埋めは単なる語句を埋める問題だけでなく、そこそこ飛躍のある論理展開を穴埋めで補完する必要があります。

 他の分野の穴埋め問題も手を付けて穴埋め問題に慣れるという作業も必要です。

圧力係数の式変形で苦戦した場合

 圧力係数を密度、速度、圧力で表現した式から比熱比とマッハ数だけで表現できるよう式変形をする必要があります。このトピックで苦戦したということは圧力係数に対する基本的な理解と式変形操作及び(式変形操作の)背景がわかっていない可能性が高いです。

 この問題は参考書でもよく載っている基本事項なので、類題を通してよく復習しておく必要があります。

微小変動方程式の考察に苦戦した場合

 この問題では、与えられた方程式の各項の特徴を考察し、どのような条件で特定の項を無視できるのかを検討する必要があります。

 苦戦した場合は、まず各項の物理的意味と大きさの関係を整理する練習をしてみましょう。

 このような考察問題は、専門科目だけでなく数学などでも求められるため、類題を通じて「式の特徴を読み取る」練習を積むことが有効です。

薄翼の考察に苦戦した場合

 前半部分では圧力係数の計算に必要な値が問題文で与えられているので、これを定義式に代入して計算すれば終わりです。

 この部分で躓いたのだとすれば、圧力係数というパラメータの定義式やその概念理解が足りていない可能性が高いので、そこを重点的に復習しましょう。

 また、求値問題なので、計算ミスがなかったかどうかも振り返りましょう。

 後半のマッハ数が高くなった時にこの式が使えなくなる理由ですが、ここで躓いた人は流体の速度分類とそれぞれの速さにおける特性理解が浅い可能性があります。

 遷音速、音速、超音速、極超音速etc.とマッハ数の値の範囲で流体の挙動がそれぞれ変わります。それぞれの流れにおける特性を整理して他の人に説明できるように理解を深めておくとよいでしょう。

楔形物体の描画に苦戦した場合

 楔形物体及び他の典型的な物体を圧縮性流れに置いた際の衝撃波の形成が整理できていない可能性が高いです。

 教科書や参考書を基に衝撃波のでき方を理解し、描画できるように練習しましょう。迎角を付けた際の衝撃波の形成過程や離脱衝撃波が発生する過程も併せて復習しておくとよいでしょう。

詳細な解答解説について

 本記事では、平成24年午前の流体力学について、出題傾向や他年度との関連、院試対策として押さえておきたいポイントを中心に解説しました。

 各設問の詳細な解答、数式の展開、計算過程については、流体力学の過去問解答解説教材に収録しています。

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