東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成20年の流体力学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
流体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679623a79b4c1904ae5e62aa>
総評
今回は粘性流体力学分野からの出題になります。無限平板の間に流体が流れており、下部の平板が速度Uで動きます。流体の粘性により、下部の平板の移動に伴って、摩擦により流体の速度が誘起されます。
このタイプの問題は(東大に限らず)本問の他にも上板が動く場合、上下の板が動く場合の3タイプが問題として出題されやすいです。いずれの問題パターンも1度やっておくようにしましょう。
問われている小問を見ていくと、ナビエ・ストークス方程式に対する理解、速度分布に関する考察、流体のもつエネルギーについての考察が問われています。
難易度★★☆☆☆
粘性流体力学の主要トピックであり、題材そのものも典型的な問題設定となっていることから、参考書をやれば1度は出会うタイプの問題です。
また、計算量もそれほど多くのものを求めているわけではないので、本問の難易度としては少し易しめの★2つとしました。
解答の指針
第1問
1.
題意の状況設定を基に圧力勾配とy軸方向の粘性項成分に関する関係式の導出を求めてきています。まずは、ナビエ・ストークス方程式を立式して題意の状況設定を反映していきましょう。
粘性流体力学ではナビエ・ストークス方程式を基に考察をすることが非常に多いですね。粘性流体の挙動を記述する超重要な方程式なので、導出方法も含めてよく復習しておいてください。
2.
圧力勾配が一定であるという仮定が問題文で与えられているので、これを前問の結果に反映して計算すればy軸方向の速度分布が導出できます。
第2問
平行平板間の体積流量を求め、これが0となるときのy軸方向の流体の速度uの分布をグラフで表します。
まずは体積流量を求める必要があるので、前問の結果を基に流量を求めていきましょう。実際は流管がパイプだったり、水路のような直方体だったりしますが、今回は紙面垂直方向は単位長さで考えてよいので、奥行きは1とすればよいでしょう。
ということは、原点からy軸方向に流量がどのように変化しているかを考えればよいですね。
最終的に流量が出たら、その流量が0となるときの流体の速度とyの関係式をグラフにすれば答えとなります。
第3問
ここから先は圧力勾配が0の時を考えます。
1.
問題文の通り、平板を動かすことで流体が手に入れるエネルギーを考える必要があります。…ということは、平板を動かすために必要な仕事が分かれば…流体が得られるエネルギーはわかるかと思います。
2.
ここは問題文に大きなヒントが書かれているので、筆者からはノーヒントとします。
3.
粘性流体力学の理論と実際の流体の挙動に関する考察です。平板を動かすことにより、流体は自身の持つ粘性により速度が平板の移動方向に誘起されます。
但し、平板の移動に使った仕事は100%流体のエネルギーに還元されるわけではないのです。この理由を考えて見ましょう。
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