東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 平成26年の流体力学(午前)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。
本問の収録先商品は以下です。
流体力学<https://gakumon-tobira.stores.jp/items/679623a79b4c1904ae5e62aa>
総評
読者の皆さんはこの問題がなんのトピックを題材としているかわかりましたか?今回は流線曲率の定理という概念が題材となりました。
一般的な大学の流体力学では…やらないんじゃないですかね…。私も大学で流体力学を学んでましたが、講義でも取り上げられず、参考書でも見つけられず…この問題の検算をする際に苦労しました。
さて、読者の皆さんもよく知るおなじみのベルヌーイの定理というのはあくまで、同一流線上にある流体の圧力と速度の関係を式にしたものでしかないんですよね。
では、異なる流線間の関係はどうなっているのだろうか?
この問いに答えられるのが流線曲率の定理というものなのです。解答例をご覧いただければわかりますが、この定理は流線の接線方向には(バロトロピック流体であれば)ベルヌーイの定理と同じ式になり、法線方向には曲率に依存した圧力勾配の関係式が導出できます。
流線曲率の定理は揚力発生の原理を説明できるツールなので、これを機に勉強してもらえればと思います。
難易度★★★★☆
いやぁ…ネットを調べれば確かに情報は出てきますが…これを初見で解くのは少ししんどいですね…
ただまぁ、出題者も問題文でフレネ・セレの公式を与えて受験生が式変形しやすいように配慮してくれていることもあるので…できないことはないと思います。
この問題はベクトル解析の理解力と流体力学の基本的な概念、及び前半の問題をうまく後半で使うための応用力が問われています。一朝一夕では身につかない解答力だと思うので、受験生の間で差がついた一問になったと思います。
以上を踏まえて、本問の難易度は難しめの★4つとしました。
解答の指針
第1問
与式の説明をしましょう。流体の運動方程式なので、各項の意味を考えればできるはずです。
イメージしづらければ成分表示してもよいかもしれません(どうせ次の問題以降で計算しますし)。
第2問
問題文の与式を成分表示して計算を進めます。この時、問題文でフレネ・セレの公式が与えられているので必要に応じて使いましょう。
第3問
第2問の結果を流線の接線方向と法線方向とに分けて成分表示しましょう。
第4問
流体の接線方向成分に着目し、式変形をします。今、流体は非圧縮性流体なので、流体の密度ρは定数ですね。
第5問
流線の法線方向成分に注目し、圧力勾配と曲率の関係性について考察しましょう。
第6問
これはお絵描き問題です。他の問題が解けなくてもこの問題だけは取れるでしょう。翼が失速していないので、この条件を踏まえて純粋に翼周りの流体の流れを描けばOKです。
第7問
これは大分考えさせられますね…。ベルヌーイの定理に関する説明の適切性について問われています。
ベルヌーイの定理はあくまで流線方向の流体の圧力と速度の関係を記述しているだけなんですよね…。ところで、この流体にかかる圧力の方向ってどっち方向だと思いますか?前問までの結果を踏まえると流線の接線方向の圧力だということがわかると思います。
上記の点も踏まえて考えてみてください。
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