東大航空宇宙工学専攻平成17年流体力学(午後)

　東京大学大学院航空宇宙工学専攻平成17年の流体力学(午後)についての総評と難易度、解答の指針についてまとめたいと思います。

本問の収録先商品は以下です。

総評

　断面積一定の管の中を流れる完全流体の挙動を考える問題です。問題文だけでイメージしづらいと感じた方は自身で絵を描いてみるのもよいでしょう。

　問題文には条件設定の他にも数値が与えられているので、文字計算の他に数値計算も求められているとわかります。

　この手の数値計算は何も考えずに計算を始めると桁の大きい数をはじき出したりします。計算ミスを減らすコツとして、なるべく計算をせずに式変形を進めるという方法があります。約分や因数分解などをうまく使うと小さな桁を扱うだけで済むので、計算ミスを減らせますし、ミスの発見もしやすいと思います。

　全体としてはエンタルピーの計算やエネルギー保存の式、質量保存の式に対する理解、h-s線図に対する理解等に加えて考察問題で構成されています。

　完全一致ではないにせよ、似たような状況設定の問題は圧縮性流体力学をやり込めば出会えるはずなので、本問は受験生にとっては比較的手を付けやすかったのではないかなと考えています。

　総評でも述べましたが、解答方針が比較的見えやすい問題構成になっています。一方でそこそこの計算量は求められること、数値計算による計算ミスの誘発も想定されることから、受験生には慎重な回答が求められます。

　解答方針の立てやすさ、計算量、制限時間を考慮すると問題の難易度としては標準的な★3つといったところでしょうか。

第1問

　マッハ数の値が与えられているので、管の入り口付近の流速は音速の値が算出できれば求められるでしょう。

　淀み点付近でのエンタルピーは…エネルギー保存則を用いれば求められるでしょう。計算問題としては鉄板ネタなので、ここは落とさないようにしましょう。

第2問

　管の入り口と管の中の任意の点の間での流体の挙動を考察します。問題文の指示の通り、エネルギー保存則と質量保存の式を連立させて、dh/dρを求めていきましょう。

　この問題は問題文に記載されている質量保存の式とエネルギー保存の式を使うという指示がなくてもできるようにしてください。

第3問

　問題文で与えられた式を使って計算を進めましょう。第2問の結果もうまく使ってdh/dsをγ,M,Tで表しましょう。後はMの値によって、h,sがどう変化するかを整理すればh-s線図の概略図は書けるはずです。

第4問

　まずは、第3問の結果を踏まえて、臨界状態になるときのマッハ数を調べるとよいでしょう。この時のマッハ数をうまく使って温度Tを求める必要がありますが…これは前問までの考え方を利用するとよいでしょう。

第5問

　これは半ば知識問題な気もします。題意の状況で流体が管の中を移動するとき、流体はあるマッハ数よりも大きくはならないということが前までの問題の結果で分かっています。

　では、管を長くしていくと、流体は管の中の移動中に臨界状態になることはできますが…それ以上マッハ数は大きくなりませんね。…では、このとき配管の出口付近ではどのような現象が起きるでしょうか？考えてみてください。