東大院 航空宇宙工学専攻 圧縮性流体力学対策

流体力学

 こんにちは。宙野です。この記事では東京大学大学院 航空宇宙工学専攻の院試の専門科目である圧縮性流体力学に関する対策をまとめた情報を提供します。

 なお、圧縮性流体力学と言ってはいますが、この記事で対象としている流体は空気なのでご了承ください。 (試験でもこの分野は基本的に空気を対象とした力学が問われます。)

 専門科目の試験の全体概要については「東大 航空宇宙 専門科目について」という記事でまとめているので、そちらも参考にしていただければと思います。

出題の傾向

 過去の出題を見ていると斜め衝撃波、垂直衝撃波に関する出題が多い印象を受けます。状況設定を図示または幾何学的な関係式を導出した後、質量保存の式や運動量保存の式を駆使して衝撃波前後の圧力比、温度比、密度比、速度比などをマッハ数で表現させるような問題が多いです。

 上記に関連して、レンズ形や翼型、平板、ひし形等の典型的な物体を高速流体中に配置させた際の衝撃波を図示させる問題が出ます。

 等エントロピー流れでは上記に加え、音速や内部エネルギー、エンタルピーの定義式も利用して衝撃波前後の圧力比、温度比、密度比、速度比などを表現させる問題が出題されます。

 最後に試験装置の原理や使い方に関する出題も見受けらるので、参考書などで補完しておきましょう。学生実験で圧縮性流体力学のトピックをやっていた人は学生実験のレポートも大いに役立つと思います。

難易度は?

 色々な意見はあると思いますが、圧縮性流体力学は比較的難易度は低めと考えます。衝撃波の発生原理や流体の振る舞いがイメージしづらいかもしれませんが、この分野の出題は式変形に関する問いが多く、参考書を見れば導出方法も載っているので解答は自作しやすいし、検証もしやすいです(求める式の形がわかっていますからね)。

 計算量が多いのでミスの不安はあるものの、式変形の方針はほぼ決まっているので、計算力さえ養えば得点しやすいと考えています。

 一方で、衝撃波や膨張波の図示や試験装置に関する論述は参考書に記載されている内容をよく読んで、解答できるよう練習を積んでおく必要があります。

どんな参考書がお勧め?

 一般的な流体力学の本は水や空気を扱っているものが多いですが、東大の航空宇宙工学専攻の流体力学は空気を対象としたものがほとんどなので、空気力学に主眼を置いて記述されている参考書を利用するとよいと思います。

 まず、基礎固めに利用する教科書的な位置づけの本としては以下の本を利用していました。

 ・圧縮性流体力学(第2版) 内部流れの理論と解析 [松尾 一泰] (オーム社)

(出典:Amazon.co.jp)

 この本には大変お世話になりました…。私が受験生だった頃、東大のシラバスで教科書指定されている本だったためか、解答作成するうえで大いに役立ってくれた本です。

 等エントロピー流れや衝撃波発生の原理、また対象物体に発生する衝撃波の形状と関係式の導出など、この試験で問われる分野の多くのトピックがカバーされています。また、説明もわかりやすいので、この本をやりこむ価値は高いと思います。

 後は以下の本もお勧めです。

 ・圧縮性流体力学 [杉山 弘] (森北出版社)

(出典:Amazon.co.jp)

 これも名著だと思いますね。図やグラフも豊富で説明もわかりやすく、1つ目に紹介した本に記載されているトピックはこの本でも網羅されている印書を受けます。

 受験生の皆さんはまずどちらか1冊を買ってやりこんだ後、必要ならもう片方を買えばいいと思います。

 私の場合は上記の松尾先生の参考書を1冊やりこんだ後、解答作成時に大学の学内にある専門書を漁ったり、上記の杉山先生の本をやりこむ活動をしていました。

 参考書をやりこむ際は数値計算よりも式変形のやり方に重点を置いて読み進めるとよいでしょう。式変形については読むだけでなく自分で手を動かして参考書と同じ式変形ができることを確認していきましょう。

対策

 全般的に衝撃波を題材にした問題が出題されますので、垂直衝撃波、斜め衝撃波の特徴をまずは抑える必要があります。

 特に上記のような題材は自分で状況設定の図示をした後、衝撃波前後の圧力比、温度比、速度比、密度比や斜め衝撃波の角度を何も見ずに円滑にマッハ数で表せるよう練習しておきましょう。

 上記に関連して、楔形、翼型、レンズ形等の典型的な物体を高速流体中に配置した際に生じる衝撃波を描けるように練習しましょう。(参考書に記載されている図をよく見て絵を描くとよいでしょう。)

 それらができたら、ピトー管(レイリーのピトー管公式)や風洞試験装置などの仕組みをおさらいして試験装置の使い方や原理を説明できるようにしておきましょう。

 等エントロピー流れは流体力学分野で頻出となっているだけでなく、推進工学でも出題されるトピックなのでやりこむ価値は高いと考えています。

 最後に、超音速流れの中にある翼に生じる抵抗(形状抵抗、造波抵抗、誘導抵抗など)については整理して説明できるようにしておく必要があります。

その他注意事項

 従来の専門科目の試験は午前と午後があったので、午前か午後のどちらか片方で圧縮性流体力学が出題されることが多かったです。

 但し、2024年からは専門科目の試験時間が半分となり、出題される大問が半減しました。とはいえ、元々の出題頻度が高かったので、圧縮性流体力学の攻略は引き続き優先度を上げて対応しておいた方がお得だと思います。

 また、この分野は熱力学と絡むことはあるので、解答作成に躓くようなら熱力学を先に攻略してもよいかもしれません。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

それではまた次回お会いしましょう!

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